カルロス・スペンサー

ニュージーランド出身のラグビーユニオン選手、カルロス・スペンサー（Carlos Spencer）は、1975年 10月14日に生まれた。スタンドオフ（SO）を主たるポジションとし、その変幻自在なプレーから「キング（Carlos“KING”Spencer）」の愛称で広く知られている。身長185cm、体重96kgの体躯を持っていた。

選手経歴

彼の選手としてのキャリアは、まずニュージーランド国内の強豪チームで形成された。1993年から2004年までの長きにわたり、NPC（当時のエア・ニュージーランドカップ）所属のオークランドチームでプレー。また、スーパーラグビーの前身であるスーパー12、そしてスーパー14においては、1996年から2005年までブルースの一員として活躍し、チームの中心選手として多くの勝利に貢献した。

国際舞台では、ラグビーニュージーランド代表、通称オールブラックスとして輝かしい足跡を残している。通算44キャップを獲得し、291ポイント、14トライを記録した。彼の代表デビューは1995年のヨーロッパツアーであり、当時の正スタンドオフであったアンドリュー・マーティンズが欠場する際にその代役を務める形で出場機会を得た。オールブラックスにおいて、試合前に披露されるマオリの伝統的な儀式「ハカ」では、リード役を務めるなど、精神的な支柱としての役割も担った。代表からは2004年8月に行われたオーストラリア代表ワラビーズ戦を最後に引退している。

プレースタイル

スペンサーの最大の魅力は、その独創的で予測不能なプレースタイルにあった。正確無比なパスワークでゲームを組み立てるアンドリュー・マーティンズとは対照的に、彼は驚くようなアングルやタイミングでパスを供給し、相手ディフェンスを翻弄した。ウィング（WTB）の選手たちは、スペンサーから繰り出される予測困難なパスに合わせて攻撃の組み立てを余儀なくされるほどだった。そのプレーはまさに天賦の才と称され、多くのファンを魅了した。

2003年ワールドカップ

彼のキャリアにおける重要な局面の一つが、2003年のラグビーワールドカップであった。この大会で彼は正スタンドオフとして出場したが、準決勝で宿敵オーストラリア代表ワラビーズと対戦した際に苦渋をなめることとなる。ワラビーズはスペンサーのパスワークを封じるべく周到な戦術を準備しており、その攻略によって彼のパス供給は精度を欠き、攻撃陣との連携がうまくいかずにチームは準決勝で敗退する結果となった。

海外での挑戦と引退後

オールブラックス引退後、彼は活動の場を海外に移した。2005年にはイングランドのプレミアシップに属するノーサンプトン・セインツへ移籍し、2009年まで在籍。続く2009-2010シーズンは同リーグのグロスターラグビーでプレーした。その後、南アフリカへ渡り、2010-2011シーズンにはライオンズに加入。実に5年ぶりにスーパーラグビーの舞台へと復帰を果たした。

選手としてのキャリア終盤には、特別な試合への参加もあった。2007年5月9日と12日に開催された日本代表とクラシック・オールブラックスの親善試合には、両試合ともにクラシック・オールブラックスの一員として出場した。これらの試合では普段のスタンドオフではなくフルバックとしてプレーし、チームの勝利に貢献している。

指導者キャリア

現役引退後、スペンサーは指導者の道へ進んだ。南アフリカではライオンズ（2012年）、シャークス（2013年）、キングス（2014年）でコーチを務めた。2016年から2018年にかけては、日本のトップリーグに属していた宗像サニックスブルースで指導にあたった。その後、ニュージーランドに戻りハリケーンズで2019年から2021年までコーチを務め、2022年からはアメリカ合衆国のNOLAゴールドでコーチとして活動している。

カルロス・スペンサーは、その天才的なパスセンスとカリスマ性で一時代を築いた選手であり、引退後も世界各地で指導者としてラグビー界に貢献を続けている。

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