アンドリュー・マーティンズ

ニュージーランドを代表するスタンドオフ

アンドリュー・マーティンズ（Andrew Mehrtens, MNZM）は、1973年 4月28日に生を受けた、ニュージーランド出身の元プロラグビーユニオン選手です。主にファースト・ファイブ・エイス（スタンドオフ）として活躍しました。彼の名前は、日本語では一般的に「マーティンズ」と表記・発音されますが、母国であるニュージーランドなど英語圏での発音は「ムートンズ」に近いとされています。

若き日々からラグビー一家の期待を背に

マーティンズは、南アフリカ共和国のダーバンで生まれましたが、幼少期に家族と共にニュージーランドへ移住し、クライストチャーチで育ちました。教育は、ラグビー強豪校としても知られる地元の名門、クライストチャーチ・ボーイズハイスクールで受けました。彼のラグビーへの道のりは早くから開け、早くもU-19およびU-21のニュージーランド代表に選ばれるなど、将来を嘱望される存在となります。彼がラグビーの才能に恵まれた背景には、輝かしい家族の歴史があります。祖父のジョージ・マーティンズはかつてニュージーランド代表「オールブラックス」のメンバーとしてプレーし、父のテリー・マーティンズもU-23ニュージーランド代表の経験を持つなど、まさにラグビー一家の出身でした。

クルセイダーズとオールブラックスでの栄光

プロキャリアは、まずニュージーランド国内の州代表選手権（NPC）で始まりました。1993年から2004年にかけて地元カンタベリー州の代表チーム、カンタベリーに所属し、チームの3度の優勝に貢献しました。並行して、スーパーラグビー（当時はスーパー12/14）には、1996年の発足当初から地元の強豪チーム、クルセイダーズの一員として参加。2005年までクルセイダーズの司令塔としてチームを牽引し、この期間にクルセイダーズは驚異的な強さを発揮し、5度の優勝を達成しました。このクルセイダーズでの活躍が、彼の名を世界に轟かせることになります。

そして、彼にとってキャリアの頂点とも言えるのが、ニュージーランド代表「オールブラックス」でのプレーです。1995年から2004年にかけて代表に選出され、通算70キャップを獲得しました。オールブラックスでの総得点は967点に上り、これは当時の歴代最高記録でした（現在はダン・カーターが更新）。彼の最も特筆すべき能力は、その正確かつ長距離を飛ばせるキックでした。ペナルティゴールやコンバージョンキックはもちろん、戦術的なキックでもチームに貢献し、オールブラックスの勝利に不可欠な存在となりました。

海外での挑戦と引退後

ニュージーランドでのキャリアに一区切りをつけた後、マーティンズは海外でのプレーを選択しました。2005年シーズンからはイングランドのプロリーグ、プレミアシップに所属するハーレクインズに移籍し、新たな環境での挑戦を開始します。2007年にはフランスへ渡り、プロD2（2部リーグ）のRCトゥーロンに加入。そして2009年からは、パリを本拠地とするラシン・メトロ92（現在のラシン92）に移籍し、チームのトップ14昇格に貢献するなど、ベテランとして円熟したプレーを見せました。

長年にわたるラグビー界への顕著な貢献と功績が認められ、2006年にはニュージーランド政府よりニュージーランド・メリット勲章（MNZM）が授与されています。これは、彼のニュージーランドラグビーにおける重要性を示す証です。また、私生活においては、オールブラックスのチームメイトでもあった元代表選手のジャスティン・マーシャルと非常に親しい友人関係にあることが知られています。

アンドリュー・マーティンズは、その卓越したゲームメイク能力と世界屈指のキック精度で、世界のラグビーファンを魅了しました。特にクルセイダーズとオールブラックスでの輝かしい実績は、ニュージーランドラグビー史において忘れられない一ページを飾っています。

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