カルロス・モンソン

カルロス・モンソンは、アルゼンチン出身の伝説的なプロボクサーです。1942年8月7日に生まれ、1995年1月8日に亡くなりました。彼はWBAおよびWBCの世界ミドル級統一王者として、特に1970年代にその圧倒的な強さを世界に示し、当時のパウンド・フォー・パウンド（全階級を通じて最も強い選手）の一人と数えられました。驚異的な勝率を誇る戦績（89勝61KO3敗9引分）を残した一方で、リング外では波乱に満ちた私生活を送り、最終的には殺人事件を起こして服役、そして事故死という悲劇的な結末を迎えました。

来歴

アルゼンチンのサンタフェで、12人兄弟の8番目として生を受けたモンソンは、1963年2月6日にプロボクサーとしてのキャリアをスタートさせました。デビュー戦ではラモン・モンテネグロをわずか2ラウンドでノックアウトし、その後の活躍を予感させました。

世界王座への道は1970年11月7日に開かれました。イタリアのニノ・ベンベヌチに挑戦し、12ラウンドKO勝ちを収めてWBA・WBC世界ミドル級統一王座を獲得。翌1971年5月の初防衛戦でのベンベヌチとの再戦でも3ラウンドKOで勝利を収め、その実力が本物であることを証明しました。

モンソンの王座時代は、まさに黄金期でした。彼の防衛ロードでは、初代世界スーパーウェルター級王者のデニー・モイヤー、卓越した技巧を持つジャン・クロード・ブーチェやトム・ボックス、強打で知られるベニー・ブリスコやトニー・ムンディンといった当時のトップ選手たちが次々と挑みましたが、モンソンはこれらをことごとく退けました。また、ウェルター級・ミドル級の二階級を制したエミール・グリフィスや、WBA・WBC世界ウェルター級王者であったホセ・ナポレス、そして後のWBC王者ロドリゴ・バルデスといった、ボクシング史に名を残す名選手たちもモンソンの前に屈しました。

特にグリフィスとは二度にわたり対戦。1971年9月25日の初戦では14ラウンドTKOで2度目の防衛に成功。1973年6月の再戦では15ラウンド判定勝ちで7度目の防衛を果たしました。また、ホセ・ナポレスとは1974年2月9日に対戦し、7ラウンドTKOで9度目の防衛に成功しています。

ミドル級の頂点に君臨し続けたモンソンですが、WBCは後に彼から王座を剥奪します。しかし、1976年6月26日、WBC王者となっていたロドリゴ・バルデスとの間で再び統一戦が行われました。この試合でモンソンは15ラウンド判定勝ちを収め、13度目の防衛に成功すると共に、失っていたWBC王座を取り戻し再び統一王者に返り咲きました。翌1977年7月30日には、バルデスとの再戦に再び15ラウンド判定勝ちし、14度目の防衛に成功。この試合を最後に、モンソンは王座を返上し現役を引退しました。ミドル級王座通算14度の防衛は、当時の記録として特筆すべきものです。

ボクシングスタイルと強さ

モンソンの強さは、そのユニークなスタイルと圧倒的なタフネスにありました。身長181cm、リーチ190cmという恵まれた体格を活かし、得意のロングレンジで試合を支配しました。彼の右ストレートは「ライフル」と称されるほど強力で、ワンツーや、その返しの左フックを正確にヒットさせることで、多くの対戦相手をマットに沈めました。

アウトボクサーでありながら高いKO率を誇った彼のパンチ力に加え、驚異的なパンチヒット率も彼の強さを支える要素でした。一見、足を引きずるようなフットワークは洗練されているとは言えませんでしたが、それが彼独自のリズムを生み出し、対戦相手にとっては掴みどころのない動きとなりました。

モンソンの最大の武器は、試合終盤でも衰えない驚異的なスタミナと、どんな状況でも揺るがない肉体的・精神的なタフネスでした。これらの要素が組み合わさることで、彼は同時代の強豪たちを全く寄せ付けない圧倒的な強さをリング上で発揮しました。日本の著名なボクシング評論家であるジョー小泉氏は、モンソンの強さを「形容詞なき強さ」と評し、その説明不能なまでの絶対的な実力を表現しています。

波乱の私生活と最期

リング上の輝きとは対照的に、モンソンの私生活は常にスキャンダルと暴力を伴う波乱のものでした。若い頃から女性関係が奔放で、1973年には妻に足を撃たれる重傷を負っています。1975年頃からは、結婚していながらアルゼンチンの有名な女優、スサナ・ヒメネスとの公然の浮気を始めました。妻への家庭内暴力は日常茶飯事となり、私生活を嗅ぎ回るパパラッチを病院送りにするほど酷く殴りつけ、何度も訴訟を起こされました。妻との離婚が成立した後も、今度は愛人であったヒメネスに対しても暴力を振るうようになります。ヒメネスとは1978年に破局しました。

その後、1979年にはウルグアイ人モデルのマリシア・ミュニズと出会い、別れと復縁を繰り返した末に結婚しました。しかし、この関係も悲劇的な結末を迎えます。1988年、モンソンは妻マリシア・ミュニズを殴り、首を絞めて意識を失わせた後、自宅の2階バルコニーから突き落として殺害するという凄惨な事件を起こしました。この罪により、彼は懲役11年の実刑判決を受け、サンタフェ刑務所に収監されました。

服役中の1995年1月8日、モンソンは仮出所中に自ら車を運転して交通事故を起こし、52歳で亡くなりました。伝説的なボクサーとしての栄光と、暴力と犯罪に彩られた私生活という、あまりにも対照的な二つの側面を持つ人物として、カルロス・モンソンの名は今も語り継がれています。

獲得タイトル

WBA世界ミドル級王座（防衛14度）
WBC世界ミドル級王座（1度目は防衛9度、2度目は防衛1度）

関連情報

関連書籍：
『80年代のリングは輝いていた 〜世界のトップボクサー 技術分析〜』（ジョー小泉著）
『ゴング・ワールド・ボクシング 戦慄のミドル級』（日本スポーツ出版社刊）
関連項目：
アレクシス・アルゲリョ
ヘクター・カマチョ
ロベルト・デュラン
シュガー・レイ・レナード
[世界ボクシング評議会]世界王者一覧
[世界ボクシング協会]世界王者一覧
* 統一世界王者

もう一度検索