カレリア (工藤静香のアルバム)

工藤静香『カレリア』：クラシカルな響きに包まれた静寂の調べ

1989年10月4日にポニーキャニオンからリリースされた工藤静香の4thアルバム『カレリア』は、彼女のキャリアの中でも異彩を放つ作品として知られています。タイトルが示す通り、本作はフィンランドでレコーディングされ、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団やヘルシンキ大学コーラス隊といった、本場のミュージシャンが参加している点が大きな特徴です。

フィンランドの息吹

作曲・編曲は、長年工藤静香の作品を手掛けてきた後藤次利が担当。しかし、これまでの後藤のイメージとは異なり、本作ではロック色は一切排除されています。代わりに、ストリングスを多用したクラシカルなアレンジが施され、全編を通して、北欧の澄み切った空気を感じさせる、幻想的な雰囲気が漂っています。

カレリア地方は、ロシア北西部に位置する湿地帯であり、歴史的にはフィンランド領でした。冬戦争の結果、ソ連に割譲されたという歴史的背景も、本作の持つ独特な雰囲気に影響を与えているのかもしれません。

作詞陣にも注目

作詞には、大貫妙子が参加。彼女ならではの繊細な言葉選びが、楽曲に深みを与えています。また、工藤静香本人も「愛絵理」名義で初めて作詞に挑戦しており、新たな才能を開花させています。

コンサートでは、本アルバムからの楽曲が、弦楽器をバックに演奏されることもありました。その模様は、『静香のコンサート '89秋 スペシャル』に収録されており、映像で楽しむことができます。

楽曲について

アルバムに収録されている「丘の上の小さな太陽」は、歌詞のみが掲載され、実際に歌われていないパートが存在します。また、「美粧の森」は、テレビ朝日系音楽番組『ミュージックステーション』で披露され、話題を呼びました。

6曲目の「真昼の夢」は、パッケージに「真昼への夢」と誤って記載されていたため、CD内に訂正紙が封入されるという珍しいエピソードも残っています。

ジャケットにも注目

アルバムの見開きには、工藤静香本人が描いた油絵が掲載されています。彼女のアーティスティックな才能が垣間見える、貴重な一枚と言えるでしょう。

『カレリア』は、工藤静香の新たな一面を表現した、挑戦的な作品です。ぜひ、北欧の美しい風景を思い浮かべながら、その音楽に浸ってみてください。

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