カロリーヌ・ボナパルト

マリア・アヌンツィアータ・ボナパルト＝ミュラ：栄光と没落のナポリ王妃

マリア・アヌンツィアータ・ボナパルト＝ミュラ (1782-1839) は、フランス皇帝ナポレオン1世の妹であり、ナポリ王ジョアシャン・ミュラの王妃として知られています。コルシカ島アジャクシオに生まれ、7人兄弟の末娘として恵まれた環境で育ちましたが、その生涯は、華麗な宮廷生活と、権力闘争、そして愛憎劇に満ちた波乱に満ちたものでした。

1796年、マリア・アヌンツィアータは、魅力的な軍人であったジョアシャン・ミュラと出会います。一目で恋に落ちた彼女は、当初反対した兄ナポレオンの説得を経て、1800年、ミュラと結婚しました。ミュラの華々しい軍功は、二人の生活をさらに豊かにしました。イタリア遠征での活躍後、ミュラは接収した宮殿で贅沢な生活を送り、その後帝国元帥に任命され、莫大な富を築きました。マリア・アヌンツィアータは、兄ナポレオンの機嫌を損ねないように振る舞い、愛人を紹介したり、逢引の場所を提供したりすることで、エリゼ宮を獲得するなど、積極的な行動も見られました。しかし、こうした行動の裏で、夫婦仲は次第に悪化していきました。

ミュラがベルク大公国の大公となった後も、夫婦関係は改善されませんでした。マリア・アヌンツィアータは小国を嫌がりフランスにとどまり、ナポレオンの新たな妻であるマリー・ルイーズに接近するなど、政治的な思惑に基づいた行動を繰り返します。将軍との浮気や、オーストリア大使メッテルニヒとの接触など、彼女の奔放な行動は、ナポレオンの怒りを買い、最終的にミュラのいるナポリ王国へ追いやられることになります。

1809年、ミュラがナポリ王となると、マリア・アヌンツィアータはナポリ王妃となりましたが、夫との不仲は解消されず、むしろ政治的な対立を深めていきます。1812年のロシア遠征では、ミュラの留守中に摂政を務めたものの、その統治は失敗に終わり、浮気騒動なども重なり国民の反感を買い、ナポレオン失脚の危機を招きます。ナポレオンの敗北後、マリア・アヌンツィアータは兄を見捨て、オーストリアと手を組み、自らの身を守ることを優先しました。ウィーン会議では権利を認められず、やむなくエルバ島から脱出したナポレオンに協力しますが、ナポレオンの再敗北後、ミュラと別れてオーストリアに逃亡しました。

その後、トリエステ、フィレンツェと移り住み、1839年、フィレンツェでコレラにより亡くなりました。華麗なる宮廷生活の裏で、権力闘争と愛憎劇に翻弄された波乱に満ちた生涯でした。彼女の生き様は、ナポレオン時代の激動期を象徴する一面として、歴史に刻まれています。

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