カロ・カン・ディフェンス
カロ・カン・ディフェンス（Caro-Kann Defence）は、チェス対局の序盤で用いられる定跡の一つです。この名称は、定跡の発展に貢献したとされるホレイショ・カロとマーカス・カンという二人の人物に敬意を表して名付けられました。
ゲームは白番の1. e4に対し、黒番がポーンを一つだけ前に進める1. c6という手で開始されます。この1. c6という手は、黒番が次に2. d5と指し、盤面中央のポーンを早期に展開する準備をすることを目的としています。
カロ・カン・ディフェンスの最も一般的な展開は、2. d4 d5と白黒双方が中央にポーンを配置する形から始まります。この後のメイン・ラインは、3. Nc3 de 4. Nxe4 Bf5と進行し、黒は早くもライトスクエアビショップを盤面外側へ展開します。続く5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 Qc7 11. Bd2 e6 12. Qe2 Ngf6 13. O-O-O O-O-O 14. Ne5 Nxe5 15. de Nd5のような手順が典型的です。この複雑な手順の中では、キングのキャスリングが異方向になることもあり、しばしば攻撃的な局面に発展します。
白の2手目としては、2. d4以外に2. c4や2. Nc3といった選択肢もあります。また、2. d3と指すと、キングズ・インディアン・アタックとして知られる別のオープニングの構造へと移行することがあります。
白の3手目では、3. Nc3の代わりに3. e5や3. edも指されます。3. e5と進んだ場合、3... Bf5 4. Bd3 Bxd3 5. Qxd3 e6 6. Nc3 Qb6のような手順が考えられます。この変化の途中で、黒が3... c5と指すと、4. c3と応じることでフレンチ・ディフェンスの変化へと変化することもあります。また、3. edはパーノフ・ボトヴィニク・アタックと呼ばれる主要な変化へと繋がります。
黒の3手目では、3... d5に対する3... g6とフィアンケットを狙う変化も存在します。
黒の4手目である4... Bf5には、4... Nd7や4... Nf6と指す選択肢もあります。4... Nd7に対して、白が5. Qe2!?のような少し珍しい手を選択した場合、黒が安易に5... Ngf6??と指してしまうと、白は6. Nd6#と見事にチェックメイトを決める可能性があります。一方、4... Nf6と指すと、5. Nxf6+ gf 6. c3 Bf5 7. Ne2 h5 8. h4 Nd7 9. Ng3 Bg4のような手順を経て、黒はポーンの形が少し乱れる代わりにビショップを活動的な位置に展開することが期待できます。1971年のポーラ対ブロンシュテイン戦では、4... Nf6 5. Nxf6+ gf 6. Bc4 Bf5と進行し、黒番のブロンシュテインがわずか20手で勝利した例もありますが、この変化でも4... Nf6 5. Qe2!?に対して黒が不用意に5... Nbd7??と指せば、白は6. Nd6#と速やかなチェックメイトに成功する可能性があります。
黒の5手目で5... Nf6?!と指す手は、6. Nxf5 Qa5+ 7. Bd2 Qxf5のようにクイーンを早期に動かしすぎることになり、他の駒の展開が遅れる傾向があるため推奨されません。
メイン・ラインにおける白の6手目と7手目は、手順が前後して指されることもあります。
黒の7手目では、7... Nd7の代わりに7... Nf6と指す手も可能です。8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 Nbd7 11. Be3 Qc7 12. O-O-O O-O-Oといった進行が考えられます。なお、7... e6と指した後に白が8. Ne5と進め、もし黒が不用意に8... Qf6??と指してしまうと、白は9. Bg5!と指すことで黒のクイーンかルークのどちらかを確実に手に入れることができます（例えば9... hgなら10. hg Qd8 11. Rxh8となります）。
白の8手目としては、8. h5の代わりに8. Bd3と進める選択肢も存在します。
白の10手目で10. Qxd3の代わりに10. cdとポーンで取り返すと、白陣にダブル・ポーンが形成され、盤面中央の構造がやや弱くなる可能性があります。
カロ・カン・ディフェンスのもう一つの重要な変化に、パーノフ・ボトヴィニク・アタックがあります。これは2. d4 d5 3. ed cdと進んだ後に、白が4. c4とさらに中央にポーンを配置することで形成されます。この変化は、カロ・カン・ディフェンスから派生したものですが、クイーンズ・ギャンビットの進行と非常に似た性質を持つことで知られています。典型的な手順は4. c4 Nf6 5. Nc3 e6 6. Bg5 Be7です。
黒の3手目で3... cdと取る代わりに3... Qxd5?とクイーンで取る手は、他の駒が全く動いていない段階でクイーンを早々と活動させることになるため、一般的には悪手とされています。
黒の4手目では、4... Nf6以外に4... e6や4... Nc6といった選択肢も考えられます。4... Nc6と指した場合、5. cd Qxd5 6. Nf3 e5 7. Nc3 Bb4 8. Bd2のような展開が続きます。
黒の5手目としては、5... e6の代わりに5... g6とフィアンケットを試みる手も存在します。この場合、6. Qb3 Bg7 7. cd O-O 8. Be2 Nbd7 9. Bf3 Nb6のように進行する可能性があります。また、5... Nc6は1935年のボトヴィニク対スピールマン戦で指された手です。その対局では6. Bg5 Qb6 7. cd Qxh2?と黒が不用意にクイーンでポーンを取りに行った結果、8. Rc1! Nb4 9. Na4 Qxa2 10. Bc4 Bg4 11. Nf3という手順を経て、黒番のスピールマンはクイーンを逃がすためにナイトを犠牲にせざるを得ない状況に追い込まれ、最終的に投了しました。この手順の途中、6... Nc6に対して黒が6... e6と指した場合は、7. cd ed 8. Bxf6 gfとなり、黒のポーン構造が弱くなるという別の困難が生じます。
これらの詳細な変化からも分かるように、カロ・カン・ディフェンスは単に堅固なだけでなく、様々な戦術的・戦略的な可能性を秘めたオープニングです。白番の攻撃的な試みに対して黒番がどのように正確に応じるかが鍵となります。
ゲームは白番の1. e4に対し、黒番がポーンを一つだけ前に進める1. c6という手で開始されます。この1. c6という手は、黒番が次に2. d5と指し、盤面中央のポーンを早期に展開する準備をすることを目的としています。
メイン・ライン
カロ・カン・ディフェンスの最も一般的な展開は、2. d4 d5と白黒双方が中央にポーンを配置する形から始まります。この後のメイン・ラインは、3. Nc3 de 4. Nxe4 Bf5と進行し、黒は早くもライトスクエアビショップを盤面外側へ展開します。続く5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 Qc7 11. Bd2 e6 12. Qe2 Ngf6 13. O-O-O O-O-O 14. Ne5 Nxe5 15. de Nd5のような手順が典型的です。この複雑な手順の中では、キングのキャスリングが異方向になることもあり、しばしば攻撃的な局面に発展します。
白の2手目としては、2. d4以外に2. c4や2. Nc3といった選択肢もあります。また、2. d3と指すと、キングズ・インディアン・アタックとして知られる別のオープニングの構造へと移行することがあります。
白の3手目では、3. Nc3の代わりに3. e5や3. edも指されます。3. e5と進んだ場合、3... Bf5 4. Bd3 Bxd3 5. Qxd3 e6 6. Nc3 Qb6のような手順が考えられます。この変化の途中で、黒が3... c5と指すと、4. c3と応じることでフレンチ・ディフェンスの変化へと変化することもあります。また、3. edはパーノフ・ボトヴィニク・アタックと呼ばれる主要な変化へと繋がります。
黒の3手目では、3... d5に対する3... g6とフィアンケットを狙う変化も存在します。
黒の4手目である4... Bf5には、4... Nd7や4... Nf6と指す選択肢もあります。4... Nd7に対して、白が5. Qe2!?のような少し珍しい手を選択した場合、黒が安易に5... Ngf6??と指してしまうと、白は6. Nd6#と見事にチェックメイトを決める可能性があります。一方、4... Nf6と指すと、5. Nxf6+ gf 6. c3 Bf5 7. Ne2 h5 8. h4 Nd7 9. Ng3 Bg4のような手順を経て、黒はポーンの形が少し乱れる代わりにビショップを活動的な位置に展開することが期待できます。1971年のポーラ対ブロンシュテイン戦では、4... Nf6 5. Nxf6+ gf 6. Bc4 Bf5と進行し、黒番のブロンシュテインがわずか20手で勝利した例もありますが、この変化でも4... Nf6 5. Qe2!?に対して黒が不用意に5... Nbd7??と指せば、白は6. Nd6#と速やかなチェックメイトに成功する可能性があります。
黒の5手目で5... Nf6?!と指す手は、6. Nxf5 Qa5+ 7. Bd2 Qxf5のようにクイーンを早期に動かしすぎることになり、他の駒の展開が遅れる傾向があるため推奨されません。
メイン・ラインにおける白の6手目と7手目は、手順が前後して指されることもあります。
黒の7手目では、7... Nd7の代わりに7... Nf6と指す手も可能です。8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 Nbd7 11. Be3 Qc7 12. O-O-O O-O-Oといった進行が考えられます。なお、7... e6と指した後に白が8. Ne5と進め、もし黒が不用意に8... Qf6??と指してしまうと、白は9. Bg5!と指すことで黒のクイーンかルークのどちらかを確実に手に入れることができます（例えば9... hgなら10. hg Qd8 11. Rxh8となります）。
白の8手目としては、8. h5の代わりに8. Bd3と進める選択肢も存在します。
白の10手目で10. Qxd3の代わりに10. cdとポーンで取り返すと、白陣にダブル・ポーンが形成され、盤面中央の構造がやや弱くなる可能性があります。
パーノフ・ボトヴィニク・アタック
カロ・カン・ディフェンスのもう一つの重要な変化に、パーノフ・ボトヴィニク・アタックがあります。これは2. d4 d5 3. ed cdと進んだ後に、白が4. c4とさらに中央にポーンを配置することで形成されます。この変化は、カロ・カン・ディフェンスから派生したものですが、クイーンズ・ギャンビットの進行と非常に似た性質を持つことで知られています。典型的な手順は4. c4 Nf6 5. Nc3 e6 6. Bg5 Be7です。
黒の3手目で3... cdと取る代わりに3... Qxd5?とクイーンで取る手は、他の駒が全く動いていない段階でクイーンを早々と活動させることになるため、一般的には悪手とされています。
黒の4手目では、4... Nf6以外に4... e6や4... Nc6といった選択肢も考えられます。4... Nc6と指した場合、5. cd Qxd5 6. Nf3 e5 7. Nc3 Bb4 8. Bd2のような展開が続きます。
黒の5手目としては、5... e6の代わりに5... g6とフィアンケットを試みる手も存在します。この場合、6. Qb3 Bg7 7. cd O-O 8. Be2 Nbd7 9. Bf3 Nb6のように進行する可能性があります。また、5... Nc6は1935年のボトヴィニク対スピールマン戦で指された手です。その対局では6. Bg5 Qb6 7. cd Qxh2?と黒が不用意にクイーンでポーンを取りに行った結果、8. Rc1! Nb4 9. Na4 Qxa2 10. Bc4 Bg4 11. Nf3という手順を経て、黒番のスピールマンはクイーンを逃がすためにナイトを犠牲にせざるを得ない状況に追い込まれ、最終的に投了しました。この手順の途中、6... Nc6に対して黒が6... e6と指した場合は、7. cd ed 8. Bxf6 gfとなり、黒のポーン構造が弱くなるという別の困難が生じます。
これらの詳細な変化からも分かるように、カロ・カン・ディフェンスは単に堅固なだけでなく、様々な戦術的・戦略的な可能性を秘めたオープニングです。白番の攻撃的な試みに対して黒番がどのように正確に応じるかが鍵となります。
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