カワサキ・Dトラッカー

カワサキD-TRACKERシリーズ：スーパーモタードの歴史を刻んだ名車

カワサキ重工業が製造販売するD-TRACKER（ディートラッカー）は、スーパーモタードタイプのオートバイとして人気を博したシリーズです。オンロード走行に特化したスタイリッシュなデザインと扱いやすい操作性で、多くのライダーを魅了しました。本稿では、D-TRACKERシリーズの歴史、モデルバリエーション、他社との連携について詳しく解説します。

D-TRACKER 250：スーパーモタードのパイオニア

1998年に登場した初代D-TRACKER 250は、デュアルパーパスモデルであるKLX250をベースに開発されました。17インチホイールとオンロードタイヤを採用し、ハンドル形状も変更することで、オンロードでの走行性能を大幅に向上。発売当初は「スーパーモタード」というカテゴリーが広く認知されていませんでしたが、D-TRACKER 250の登場は、このジャンルを日本で確立する上で大きな役割を果たしました。

その後もマイナーチェンジを繰り返し、2004年からはタイカワサキへの生産移管が行われました。この際に、後輪リムの幅が拡大されるなどの改良が加えられています。さらに、2002年から2000年代半ばにかけてカワサキとスズキの業務提携により、D-TRACKER 250はスズキからも「250SB」として販売されました。

D-TRACKER X：進化したオンロード性能

2008年にはフルモデルチェンジを行い、「D-TRACKER X」として登場。ベースとなったKLX250のモデルチェンジと同時に、ホイールだけでなく、サスペンションやブレーキにも専用のセッティングが施され、より洗練されたオンロード性能を実現。メーターパネルにも燃料計とタコメーターが追加されました。北米やオーストラリアでは「KLX250SF」として販売され、地域に合わせた仕様変更が加えられていました。日本向けモデルは、2016年のファイナルエディションをもって生産が終了しました。

D-TRACKER 125：125ccクラスへの挑戦

2009年には、125ccモデルの「D-TRACKER 125」が登場。日本メーカーによる国内向け125ccエンジン搭載MT車としては、長らくの新モデルとなりました。KLX125をベースにモタードスタイルに仕上げられ、14インチホイールと倒立サスペンションを採用。かつて人気を博したミニモタード「KSR110」の後継モデルとして位置づけられました。エンジンはKLX125と共通のフューエルインジェクション搭載の空冷単気筒エンジンを採用。日本向けモデルは2016年に販売終了となりましたが、東南アジアでは排気量150ccの「D-TRACKER 150」として販売され、モデルチェンジを経て17インチホイールを採用するなど進化を遂げています。

他社との連携

D-TRACKERシリーズは、カワサキとスズキの業務提携という側面からも注目に値します。250SBとしてスズキから販売されたD-TRACKER 250は、両社の技術交流の一例として、オートバイ業界の歴史において重要な出来事となりました。

まとめ

D-TRACKERシリーズは、スーパーモタードというジャンルを日本で確立し、発展させた重要なモデルです。スタイリッシュなデザインと高い走行性能は、多くのライダーを魅了し続けました。250cc、125ccモデル共に、その歴史と進化は、オートバイ史に大きな足跡を残しています。様々なモデルバリエーションや他社との連携は、今後のオートバイ業界の発展においても貴重な教訓となるでしょう。それぞれのモデルが持つ特徴や歴史を理解することで、D-TRACKERシリーズの魅力をより深く知ることができるでしょう。

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