カワサキ・GPZ1100

カワサキGPZ1100：空冷と水冷、二つの魅力

カワサキGPZ1100は、カワサキ重工業が製造した大型バイクとして、高い人気を誇るモデルです。しかし、「GPZ1100」という名称には、大きく異なる2つのモデルが含まれるため、その理解には注意が必要です。本記事では、空冷エンジンのGPz1100（ZX1100A）と水冷エンジンのGPZ1100（ZX1100E、ZX1100F）を個別に解説し、両者の違いを明確に示します。

GPz1100 (ZX1100A) - 空冷エンジンの雄

1983年に登場したGPz1100（ZX1100A）は、カワサキが誇る空冷エンジンを搭載したモデルです。Z1000Hで初採用されたKEFIインジェクションシステムを進化させたDFIシステムを採用し、最高出力120馬力を発揮しました。このモデルは、Z1から続くカワサキの大型空冷スポーツバイクの流れを汲む最後のモデルと言えるでしょう。翌1984年には水冷エンジンのGPZ900Rが登場し大ヒットを記録しますが、GPz1100は独自の風格を保ち続けました。

そのスタイリングは、前年にモーターショーで発表された750ターボのカウルデザインを踏襲しており、GPz250、GPz400/400F、GPz750/750Fといった兄弟車と共通のシリーズ感を演出。輸出専用車のような風格が人気を博しました。シャープなフロントカウルは、後継機となるGPZ900Rにも受け継がれ、長きに渡ってカワサキのデザインアイコンとして親しまれることとなります。しかし、空冷エンジンの熱対策は限界に達しており、それが水冷エンジンへの移行を促す大きな要因となりました。

GPZ1100 (ZX1100E / ZX1100F) - 水冷エンジンによる新たな境地

1994年ケルンショーでデビューしたGPZ1100（ZX1100E/ZX1100F）は、フラッグシップモデルであるZZR1100よりも低価格で、ツーリング用途を重視して開発されました。エンジンはダウンドラフトからサイドドラフトに変更され、低中速トルクが向上。フレームもアルミツインチューブからダブルクレードルに変更され、快適な長距離走行を実現する設計となっています。標準でGIVI社製のパニアケースを設定できるなど、ツーリング性能の高さを重視した作りとなっています。また、ABS搭載モデル（ZX1100F）もラインナップされました。

スタイリングはZZR1100を彷彿とさせますが、よりスポーティなZZR1100とは異なり、ツーリング性能を重視したモデルであるため、Ninjaのペットネームは付けられていません。サイドスタンドを掛けた際の角度も、荷物の積載性を考慮して設計されています。

市場における呼称の混乱

中古車市場やパーツ市場では、空冷モデルを「GPZ1100F」や「GPz1100F」と表記されるケースが多いですが、実際にはGPz1100Fというモデルは存在しません。GPz750や400シリーズ後期型では、排気量に「F」を付加したモデルが存在しましたが、これは空冷/水冷の区別を意味するものではありません。水冷モデルを「GPZ1100-2」と表記するケースも見られますが、これも公式な呼称ではありません。これらの混乱は、1980年代のオートバイ技術の急速な発展と、メーカーの車名表記方法の変化に起因していると考えられます。

まとめ

GPz1100は、空冷と水冷という異なるエンジンを搭載した2つのモデルからなる、カワサキを代表する名車です。それぞれのモデルは異なるコンセプトに基づいて開発されており、時代背景や技術革新を反映した、個性豊かな一台となっています。中古車市場でこれらのモデルを検討する際には、正確なモデル名と仕様を把握することが重要です。

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