カワサキ・Z250FT

カワサキZ250FT：軽快な走りと個性的なデザインが魅力の1970年代後半型オートバイ

カワサキZ250FTは、1979年1月に川崎重工業から発売されたオートバイです。それまで同社主力だった2ストロークエンジンのKHシリーズからのモデルチェンジとして、4ストロークエンジンを搭載したZ400FXと共に開発されました。Z400FXと姉妹車として位置付けられることもありますが、エンジンやフレームはそれぞれ専用設計されており、車体構成に共通点はほとんどありません。

Z250FTの開発背景とデザイン

当時、250ccクラスのオートバイは、400ccクラスのフレームを流用しエンジンのみを小型化したモデルが多く、車格に比べてパワー不足が課題でした。Z250FTは、この状況を打破すべく開発されました。空冷SOHC2バルブエンジンは、軽快な吹け上がりとレッドゾーンに達する高回転性能を両立。専用設計の軽量車体と相まって、優れた走行性能を実現しました。

デザイン面では、それまでのカワサキ車に見られた曲線的なデザインから、Z1000MkII、Z750FX、Z400FXと共通する直線基調のボクシーなスタイルへ転換する過渡期に位置づけられます。このデザイン変更は、カワサキ車のブランドイメージを統一する効果も持っていました。

モデルバリエーションと改良点

Z250FTは、1979年から1982年にかけて複数モデルが発売されました。主な変更点は以下の通りです。

Z250-A1 (1979年1月): キャンディエメラルドグリーンとメタリックスターダストシルバーの2色展開。
Z250-A2 (1979年10月): フロントフォークとエンブレムを追加。キャンディパーシモンレッドとグランプリシルバーの2色展開。
Z250-A3 (1981年4月): オートカムチェンテンショナーを採用。キャンディロイヤルブルーとルミナスルビーレッドの2色展開。
Z250-A4 (1982年1月): ヘッドライトを丸型から角型に変更。セミエア式フロントフォークを採用。メタリックスターライトブラックとギャラクシーシルバーの2色展開。
Z250-A5 (1982年6月): CDI点火に変更。ギャラクシーシルバー1色展開。
Z250-B (1980年): 輸出仕様。スポークホイール、前後ドラムブレーキ、2in1集合マフラーを採用。ファイヤークラッカーレッドとブリリアントブルーの2色展開。

エンジンの系譜と後継モデル

Z250FTに搭載された空冷4ストロークOHC2バルブ直列2気筒エンジンは、1981年発売のアメリカンタイプモデルZ250LTD-TWINにも流用されました。一方、Z250FTの後継モデルであるGPz250には、水冷DOHC4バルブエンジンが搭載されました。この水冷エンジンは、GPZ250R、GPX250R、ZZR250と、カワサキの250ccクラスのスポーツバイクに長く使用され続けました。Z250FTは、カワサキの250cc二気筒エンジンの系譜における重要な位置付けを持つモデルと言えますが、空冷2バルブと水冷4バルブという違いは存在します。

市場における競争とGPz250へのモデルチェンジ

1982年にホンダからVT250Fが発売されると、4ストロークエンジン搭載の高出力・高性能モデルが市場に出回るようになりました。若者向けに設定されたZ250FTは競争力を失い、1983年には後継モデルとしてGPz250が発売されました。GPz250は、GPzシリーズの特徴である流麗なスタイリングとベルトドライブを採用。エンジン出力も向上し、軽量化とサスペンションの改良により、運動性能も大幅に向上しました。

その他の派生モデル

Z250FTは、輸出仕様のZ250Bや、アメリカンタイプのZ250LTD-TWINといった派生モデルも存在します。これらのモデルは、基本的なエンジンやフレームはZ250FTと共通ですが、ブレーキシステム、ホイール、マフラーなど、いくつかの点で違いがあります。

Z250FTは、その軽快な走りと個性的なデザインで人気を博したモデルであり、カワサキの歴史において重要な位置を占めるオートバイです。

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