カワサキ・ZX-10

カワサキZX-10：伝説的名車の系譜

カワサキ・ZX-10は、川崎重工業が1988年から海外市場に向けて製造を開始したオートバイです。愛称は「テン」などと呼ばれ、高い人気を誇りました。

高性能エンジンと革新的設計

ZX-10は、1987年の東京モーターショーで発表。GPZ900R、GPZ1000RXに続く、同社水冷エンジン搭載フラッグシップモデルの3代目として登場しました。ベースとなったのはGPZ1000RXの997cc水冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンですが、ZX-10では大幅な改良が加えられています。

具体的には、シリンダーヘッドのコンパクト化、バルブ挟み角の最適化、動弁系の見直し、キャブレター吸気方法の変更などが実施されました。従来の1カム2バルブのY型ロッカーアームは廃止され、軽量ピストンを採用することで圧縮比も向上。これらの改良により、最高出力はGPZ1000RXと比べて12psアップの137psを実現しました。

軽量化と優れたハンドリング

車体も大幅な改良が施されています。GPZ1000RXのスチール製メインフレームに代わり、ZX-10ではアルミ製のツインチューブフレーム（カワサキはこれを“e-BOX FRAME”と呼んでいました）を採用。フレーム単体で4.5kg、車体全体で16kgもの軽量化に成功し、乾燥重量は222kgとシリーズ最軽量となりました。

さらに、タイヤにはラジアルタイヤを採用することでハンドリング性能の大幅な向上も達成。これらエンジン性能と車体改良の相乗効果により、ZX-10はノーマル状態で最高速度270km/hを超え、0-400m加速を10秒50で走り切る圧倒的な動力性能を実現しました。

短い歴史と高い人気

ZX-10の生産期間は1988年から1989年までのわずか2年間でした。翌年の東京モーターショーで発表されたZZR1100へのモデルチェンジにより、生産は終了しました。しかし、その短い期間にも関わらず、ZX-10は高い性能と魅力的なデザインで多くのライダーを魅了し、カワサキの伝説的名車として語り継がれています。その高い性能と短い生産期間は、ZX-10を希少価値の高いモデルとして位置付けています。

関連車種

GPZ900R
GPZ1000RX
ZZR1100
ZZR1200
* ZZR1400/ABS

ZX-10は、カワサキの技術力の高さと、その時代のオートバイ開発における革新性を象徴するモデルと言えるでしょう。その高いパフォーマンスと短い生産期間は、多くのファンにとって、いつまでも記憶に残る一台となっています。

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