カントゥ市国際ピアノ協奏曲コンクール

イタリア北部の都市カントゥにて開催される国際ピアノコンクールです。正式名称は「Concorso Internazionale per pianoforte ed orchestra ”Città di Cantù”」。一般的なピアノコンクールとは異なり、最初から最後までピアノ協奏曲のみで審査が進められる極めてユニークな形式を特徴としています。

審査形式と部門

このコンクールの大きな特徴は、その審査方式にあります。まず、40曲以上ある指定のピアノ協奏曲の中から1曲を選び、その第1楽章を演奏したビデオによる予選が行われます。このビデオ予選を通過した参加者は、準本選へと進みます。準本選は古典派協奏曲部門とロマン派協奏曲部門にそれぞれ12名ずつが進出し、指定された部門の協奏曲全楽章をオーケストラと共に演奏します。本選でも同様に、協奏曲全楽章の演奏によって最終的な順位が決定されます。

第3回から古典派とロマン派の2部門制となり、参加者はどちらか一方、または両方の部門にエントリーすることが可能となりました。かつては21世紀の作品に焦点を当てた部門も存在しましたが、短期間で廃止されています。近年は、時代区分をより明確にするためか、A部門（古典派）とB部門（それ以外）、そしてヤングタレント部門といった新たな部門制度が導入されています。

コンクールの変遷と位置づけ

2007年以降、アルゲリッチ芸術財団（AAF）に参加したことで、このコンクールの国際的な知名度は大きく向上しました。一時期は古典派協奏曲部門だけで69名もの応募者を集めるなど、活況を呈した時期もありましたが、近年は応募者数が減少傾向にあります。

現在はAAFからも世界国際音楽コンクール連盟（WFIMC）からも離脱しており、運営規模としては以前よりローカルな位置づけにあると言えます。しかしながら、課題曲が協奏曲1曲に絞られているという特性から、特に日本人ピアニストからの関心を集めており、多くの挑戦者が参加してきました。過去には田中正也や反田恭平といった著名な日本人ピアニストが第1位を獲得しています。

WFIMCのような主要な連盟には加盟していない現在の状況でも、将来有望な若手ピアニストを発掘し、入賞させるという方針は変わっていません。実際、このコンクールで入賞を果たしたピアニストの中から、後にWFIMCに加盟している他の国際コンクールで優勝する者も多く輩出されており、次世代のスターへの登竜門としての役割を果たしている側面も見られます。

ピアノ協奏曲のみで優劣を競うコンクールとしては、過去にマリア・カラス・グランプリのピアノ部門が知られていましたが、こちらはすでに閉会しています。

過去の主な第一位入賞者

1991年: Gloria D'Atri
1992年: Josè Luis Gallardo
1993年: 古典派部門 Elisaveta Blumina, ロマン派部門 Victor Chestopal
1994年: 古典派部門同率1位 Ingrid Fliter, Lory Kaufman, ロマン派部門 Ingrid Fliter
1995年: ロマン派部門同率1位 Tamara Sanikidze, 江澤聖子
1996年: 古典派部門 Olivier Cazal
1997年: 古典派部門干野宜大, ロマン派部門同率1位 Jenni Lin Ferrati, Francesco Grillo
1998年: 古典派部門同率1位 Maria Clementi, Mikail Yanovitsky
1999年: 古典派及びロマン派部門スタニスラフ・イオウデニチ
2000年: 古典派部門 Vera Kameneva, ロマン派部門 Olga Kern
2001年: 古典派部門 Alexander Romanovsky, ロマン派部門 Hubert Salwarowsky
2002年: 古典派部門 Plamena Mangova, ロマン派部門碓井俊樹, Roberto Corlianò
2003年: ロマン派部門 Oleg Poliansky
2004年: 古典派及びロマン派部門 Michael Namirovsky
2005年: ロマン派部門森田義史
2006年: 古典派部門 Pietro Gatto
2007年: 古典派部門 Mariya Kim, ロマン派部門アレクサンドル・ヤコブレフ
2008年: 古典派部門 Federico Colli, ロマン派部門同率1位 Federico Colli, Irina Dubovik
2009年: 古典派部門 Qing Zhi Chen, ロマン派部門 Andrey Gugnin
2010年: ロマン派部門 Guang Chen
2011年: 古典派部門佐藤卓史, ロマン派部門同率1位田中正也, Galina Chistiakova
2012年: ロマン派部門同率1位 Alexey Chernov, Christopher Falzone
2013年: 古典派部門 Zoltan Fejervari, ロマン派部門同率1位 Emanuel Rimoldi, Yumin Wu
2014年: ロマン派部門 Christian De Luca
2015年: 古典派部門 Bolai Cao, 反田恭平, ロマン派部門同率1位 Bolai Cao, Alexei Melnikov
2016年: ロマン派部門同率1位 Pavel Kachnov, アンドレイ・シチコ
2017年: 古典派部門 Xing Chang, ロマン派部門同率1位 Xingyu Lu, Anna Dmytrenko
2018年: A部門 1位八木大輔, B部門同率1位 Evgeny Konnov, Denis Linnik, 21世紀部門 Matias Nestor Cuevas
2019年: A部門 1位 Liu Ziyu, B部門同率1位 Maxim Kinasov, Koutnetsov Yolande, 21世紀部門同率1位 Cristiani Vincenzo, Ritivoiu Mihai Gheorghiu
2022年: 古典派部門 1位 Paul Mnatsakanov, ロマン派部門 1位 Roman Kamisarau
2023年: 古典派部門 1位 Jacky Zhang, ロマン派部門 1位 Jacky Zhang, ヤングタレント部門 1位 Massimo Urban
2024年: A部門 1位 Davit Khrikuli, B部門 1位 Davit Khrikuli, ヤングタレント部門 1位 Mattias Antonio Glavinic, Jovanny Pandolfo

もう一度検索