碓井俊樹

碓井俊樹（うすい としき）

1977年生まれの日本のクラシックピアニスト。その音楽活動は国境を越え、多岐にわたる社会的な役割も担っている。現在、一般社団法人横浜シンフォニエッタの代表理事や日本香港音楽協会理事長などを務め、国内外の音楽文化振興に寄与している。

幼少期から音楽の才能を示し、渡辺泉、武田宏子、岩崎淑、植田克己といった日本の指導者に加え、カール・ハインツ・ケンマリングやアヴォ・クユムジャンといった国際的に著名な教育者からも薫陶を受けた。学業においては、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校から東京藝術大学へと進み、さらにザルツブルク・モーツァルテウム大学でも研鑽を積んだ。東京藝術大学を卒業する際には、優秀な成績を収めた者に贈られる同声会賞を受賞している。

演奏家としては、国内外の主要オーケストラとの共演を重ねている。これまでに東京フィルハーモニー管弦楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、芸大フィルハーモニア、キエフ国立フィルハーモニー交響楽団など、多くの著名な団体と共にステージに立った。また、リサイタルや様々な音楽祭において、イヴリー・ギトリスやピエール・アモイヤルといった世界的な名手たちとの共演も数多く実現させている。録音活動も活発で、ピアノソロ、ピアノ協奏曲、室内楽など、幅広いジャンルのCDを多数発表している。

2003年からはオーストリアのウィーンにも拠点を設け、ここを中心にヨーロッパでの演奏活動を精力的に展開。各国の国際音楽祭へ招かれるほか、国際音楽コンクールの審査員としても招聘されている。演奏を通じて親善を深めた国・地域は40カ国以上に及び、北のアイスランドから南の南極大陸まで、100ヶ国を超える地域を訪れるなど、その活動範囲は極めて広い。世界各地での演奏活動を通じて、人々と交流し信頼を築きながら、芸術文化の向上に力を注いでいる。

特筆すべき活動として、2001年より国連の支援を受けてシリア共和国やパレスチナの難民キャンプでボランティア演奏会を継続して開催しており、音楽を通じた社会貢献にも深い関心を寄せている。また、未だ日本で紹介されていない重要な作品の紹介にも努めており、ヴァンサン・ダンディのピアノ協奏曲や、ジョージアの作曲家ヴァジャ・アザラシヴィリのピアノ協奏曲第2番の日本初演を務めるなど、新たなレパートリーの開拓にも貢献している。

教育者としての側面も持ち合わせており、2013年には尚美学園大学の客員准教授に、2017年には上野学園大学の客員教授に就任し、後進の指導にも情熱を傾けている。

その功績は国内外で高く評価されており、数々の賞を受賞している。1999年にはオランダ・ミュージック・セッションでのドネムス演奏賞、イタリア・ヴァルセージア国際音楽コンクールでの特別賞を受賞。2002年にはカントゥ市国際ピアノ協奏曲コンクールロマン派協奏曲部門で第一位同着となる。さらに、2006年にはウィーン現代前衛芸術団体TAMAMUより現代芸術特別賞を、2017年には「音楽を通じた日本とアルジェリアとの相互理解の促進」に貢献したとして平成29年度外務大臣表彰を受けている。2019年にはジョージアのカヘティ州シグナギ市より名誉市民の称号が贈られ、2020年には第三回種田山頭火賞を受賞するなど、音楽の分野に留まらない幅広い活動が認められている。

多面的な活動を通じて、碓井俊樹は単なる演奏家にとどまらず、音楽を社会や人々を結びつける力として活用し、国際的な友好と文化交流の促進に貢献し続けている。

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