カンピョーネ・ディターリア

カンピオーネ・ディターリア：スイスに囲まれたイタリアの飛び地

カンピオーネ・ディターリアは、イタリア共和国ロンバルディア州コモ県に位置する、人口約1900人の小さな町です。その最大の特徴は、周囲をスイス領に完全に囲まれた、イタリアの飛び地であるという点にあります。ルガーノ湖畔に位置し、対岸にはスイス最大の都市ルガーノを望む美しい景観も魅力です。

独自の地理と経済

カンピョーネ・ディターリアの地理的条件は、その社会や経済に大きな影響を与えています。スイスとの国境はすぐそこにあり、住民の日常生活はスイスと密接に結びついています。町の公式通貨はスイス・フランであり、ユーロも広く流通していますが、経済活動は事実上スイスと一体化しています。EUの関税制度からは除外されており、EU付加価値税も適用されません。交通に関しても、イタリア本土との行き来は容易ではなく、スイスを経由する必要があります。

歴史：ローマ時代の兵営都市から現代へ

カンピオーネ・ディターリアの歴史は古く、紀元前1世紀まで遡ります。ローマ時代には、ヘルウェティイ族の侵攻からローマ領を守るための兵営都市「Campiglio」または「Campilionum」が置かれ、これが町の起源とされています。町名はラテン語の「野原」を意味するcampusに由来すると考えられています。興味深いことに、イタリア語のCampioneは英語のChampion（チャンピオン）と同じ語源を持ちます。

中世には、ロンバルド人の支配下に置かれ、カトリックが浸透していきます。756年の文書には、聖ゼノのための聖堂への寄進が記録されており、777年には有力者Totone da Campioneが土地をミラノのサン・アンブロージョ修道院に寄進したことが伝えられています。この寄進が、カンピオーネがイタリア領に残った重要な要因だと考えられています。

中世から近世にかけて、カンピオーネは優れた石工を輩出したことで知られていました。「カンピオーネの職人」として知られた石工たちは、イタリア北部からアルプス以北、フランス、イベリア半島まで活躍しました。厳しい山岳地帯の環境から、生計を立てるために国外へ出る必要があったことが背景にあります。彼らの技術や建築様式は、現在も研究者の間で注目を集めています。ボニーノ・ダ・カンピオーネ、アンセルモ・ダ・カンピオーネ、ジョヴァンニ・ダ・カンピオーネなど、著名な石工たちがカンピオーネ出身です。

16世紀初頭、ミラノ公国がスイスに併合された際も、カンピオーネは修道院領であったため、スイスには加わりませんでした。1859年の第二次イタリア独立戦争後、カンピオーネは正式にイタリア領となり、1933年にはムッソリーニ政権によって町の名に「ディターリア」（イタリアの）が加えられました。

カジノと公共サービス

カンピオーネ・ディターリアは、かつて公営カジノ「カジノ・ディ・カンピョーネ」を擁していました。1933年に開設され、1999年には改築されたこのカジノは、スイスやイタリア本土よりも緩やかなギャンブル規制を導入することで知られていました。しかし、2018年には破産し、現在は閉鎖されています。

公共サービスに関しても、スイスとの結びつきが強いです。イタリア国民である住民は、スイスの施設やサービスをスイス国民と同様に利用できます。電話サービスは主にスイスのSwisscomが提供しており、イタリア本土への電話は国際電話となります。郵便番号も、イタリアのものに加えてスイスの郵便番号が割り当てられています。

カンピオーネ・ディターリアは、その特異な地理的条件と歴史的背景から、ユニークな文化と社会システムを持つ、魅力的な町です。スイスとの深い関係を保ちながら、イタリアの一部として独自の道を歩み続けています。

もう一度検索