ヘルウェティイ族

ヘルウェティイ族：古代スイスに生きたガリアの民

ヘルウェティイ族は、紀元前1世紀頃、現在のスイスから南ドイツにかけて居住していたガリア人の部族です。スイスの古名である「ヘルヴェティア」は、この部族の名前に由来しています。彼らの歴史は、古代ローマの歴史家、ガイウス・ユリウス・カエサルの『ガリア戦記』に詳しく記されており、ガリア戦争の重要な一側面を形成しています。

歴史

スエビ族の侵攻と西への移動

カエサルの『ガリア戦記』によれば、紀元前1世紀、ヘルウェティイ族は強大なスエビ族の攻撃に晒されていました。当時の族長であったオルゲトリクスは、部族の存続をかけ、西方への大規模な移動を決断します。その移動経路には、当時ローマの属州であったガリア・ナルボネンシス（現在のプロヴァンス地方）を通過する必要がありました。オルゲトリクスは、ローマの属州総督であるカエサルに通過許可を求めましたが、カエサルはこれを拒否します。オルゲトリクスはこれを無視して強行突破を決意し、この行動が後にガリア戦争の直接的な引き金となりました。

移動開始とローマ軍との衝突

『ガリア戦記』によれば、この時のヘルウェティイ族の総人口は約39万人、うち武器を携行できる成年男子は約11万人でした。一方、カエサル率いるローマ軍は、当初6個軍団、約2万9千人の兵力を擁していました。カエサルは状況を鑑みて、さらに2個軍団を動員します。ヘルウェティイ族は移動を開始する前にオルゲトリクスを失いましたが、その後も移動を強行。彼らは、自分たちの村を全て焼き払い、持てるだけの食料と財物を携えて移動を始めました。しかし、アエドゥイ族の町ビブラクテ付近でローマ軍に攻撃を受け、激戦の末に敗北。この戦いでヘルウェティイ族は、その人口の約6割を失い、約2割が捕虜となり、残りは四散し、故郷ヘルヴェティアへと戻らざるを得ない状況となりました。捕らえられたヘルウェティイ族の多くは、奴隷として売られたり、カエサルの軍団に吸収されたりしました。

その後のヘルウェティイ族

紀元前52年、アルウェルニ族のウェルキンゲトリクスがローマに対して反乱を起こした際には、約1万人のヘルウェティイ族がウェルキンゲトリクスの軍に参加しました。これは、ヘルウェティイ族がローマの支配に完全には屈していなかったことを示しています。

まとめ

ヘルウェティイ族は、古代スイスの地に居住していたガリア人の部族であり、その歴史はカエサルの『ガリア戦記』を通じて現代に伝えられています。彼らの大規模な移動とローマ軍との衝突は、ガリア戦争の重要な一幕であり、その後の歴史に大きな影響を与えました。ヘルウェティイ族の存在は、古代ヨーロッパの歴史を理解する上で欠かせない要素です。

脚注

『ガリア戦記』におけるヘルウェティイ族の記述は、カエサルの政治的意図や戦略が反映されている可能性があります。そのため、ヘルウェティイ族の歴史を解釈する際には、複数の視点からの検討が必要です。

参考文献

ガイウス・ユリウス・カエサル著『ガリア戦記』
その他、古代ローマ史に関する文献

関連項目

ケルト人
ガリア戦争
スイスの歴史

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