カンポーリの聖母

『カンポーリの聖母』（伊: Madonna Campori、英: Campori Madonna）は、イタリアのルネサンス期を代表する画家、コレッジョによって描かれた板上の油彩画です。この作品は、その様式的な特徴から、1517年から1518年頃に制作されたと考えられています。

作品の帰属と所蔵

この絵画は、当初は作者が不明でしたが、画家のヴィンチェンツォ・ラゾーリによってコレッジョの作品であると鑑定されました。現在、『カンポーリの聖母』は、イタリアのモデナにあるエステンセ美術館に収蔵されており、一般公開されています。

様式と影響

『カンポーリの聖母』の制作時期は、『聖母子と幼児洗礼者ヨハネ』や、パルマのサン・パオロ修道院のカーメラ・ディ・サン・パオロのフレスコ画とほぼ同時期であると考えられています。この時期のコレッジョの作品は、初期のレオナルド・ダ・ヴィンチの影響から脱却し、ラファエロの作風に強く影響を受けていることが特徴です。

特に、『カンポーリの聖母』には、ラファエロの『フォリーニョの聖母』や『テンピの聖母』からの影響が見られます。これらの作品と同様に、この絵画も聖母マリアの優美な姿と、キリストの幼子への愛情深い眼差しが描かれており、その構図や表現にはラファエロの影響が色濃く反映されています。

歴史的背景

この作品は、1894年にマルケーゼ・ジュゼッペ・カンポーリによって、現在の所蔵先であるエステンセ美術館に寄贈されました。作品の依頼主については正確にはわかっていませんが、1894年以前にはマントヴァ近郊のソリエーラ城の礼拝堂に飾られていたことが知られています。この城は、1636年以降、カンポーリ家の邸宅の一部となっていました。

作品の意義

『カンポーリの聖母』は、コレッジョの芸術的な変遷を理解する上で重要な作品です。この作品を通して、コレッジョが初期のレオナルド・ダ・ヴィンチの影響から脱却し、ラファエロの様式を取り入れながら独自のスタイルを確立していった過程を垣間見ることができます。また、この絵画は、ルネサンス美術における聖母子の主題が、どのように画家によって解釈され、表現されてきたかを示す貴重な資料でもあります。

『カンポーリの聖母』は、その歴史的価値と芸術的な美しさから、美術史家や美術愛好家から高く評価されています。モデナを訪れる際には、エステンセ美術館でこの傑作を直接鑑賞することをおすすめします。

関連作品

『カンポーリの聖母』と関連性が指摘されるコレッジョの作品には、以下のようなものがあります。

『聖母子と幼児洗礼者ヨハネ』：同時期に制作されたとされる作品で、コレッジョのラファエロへの接近を示す作風が見られます。
カーメラ・ディ・サン・パオロのフレスコ画：同じく1517年から1518年頃に制作され、コレッジョの筆致や構図の特徴が共通しています。
* 『フォリーニョの聖母』、『テンピの聖母』：ラファエロの作品で、『カンポーリの聖母』に影響を与えたとされる作品です。特に構図や聖母子の表現において、その影響が顕著です。

これらの作品と合わせて鑑賞することで、『カンポーリの聖母』の芸術的価値をより深く理解することができます。

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