フレスコ

フレスコとは

フレスコ（イタリア語: affresco、英語: fresco）は、特有の絵画技法であり、主に壁画制作に用いられます。この手法では、まず壁に漆喰を塗布し、その漆喰がまだ生乾きの状態で耐アルカリ性の顔料を混ぜた水または石灰水で描くことが特徴です。

フレスコの魅力と技法の概要

フレスコの最大の利点は、その保存性にあります。漆喰が乾燥した後は、水に浸しても顔料が滲むことがなく、長期間にわたって美しい状態を保つことができます。そのため、失敗した際には漆喰を剥がしてやり直す必要がありますが、成功すれば高い耐久性を持つ作品が得られます。

古くは、ラスコーの壁画が「天然のフレスコ画」と言えるもので、洞窟内の炭酸カルシウムが壁画の保存性を向上させたことが挙げられます。また、古代ローマのポンペイの壁画もフレスコ画の一例として知られています。

フレスコの種類

フレスコにはいくつかの技法が存在します。主なものを以下に説明します。

湿式法

• - ブオン・フレスコ (Buon Fresco) とは、漆喰が硬化する前の湿った状態で描く方法です。この手法では顔料と漆喰が反応し、一体化します。そのため、この技法で制作された作品は非常に耐久性が高く、発色も良好です。画家は、描く範囲を分けた「ジョルナータ」ごとに計画し、湿った漆喰の上に迅速に描く必要があります。

乾式法

• - フレスコ・セッコ (Fresco Secco) では、乾いた漆喰の上に顔料を使って描画します。この技法は媒材を使用し、耐久性や発色がブオン・フレスコに比べて劣ることが一般的です。これは古代から広く利用されてきた方法であり、ブオン・フレスコの補助的に利用されることもあります。

半湿式法

• - メッゾ・フレスコ (Mezzo Fresco) では、ブオン・フレスコの作業可能時間を延長するために、顔料に消石灰などの媒材を混ぜる技術です。この方法では漆喰の乾燥が遅れるように工夫が施され、描くべき範囲が広がります。

掻き落とし法

• - ズグラッフィート / グラッフィート (Sgraffito/Graffito) では、異なる色の漆喰を層に重ね、その一部を掻き取ることでデザインを形成します。この技法は耐久性が高いため、主に外壁に使用されることが多いです。

フレスコ制作の基本手順

フレスコ画を描く際の基本的な流れは次の通りです。
1. 支持体の準備: 煉瓦や石による壁を用意します。
2. 荒下地作成: 壁面を水で湿らせてから、粗い砂と消石灰の漆喰を塗布します。
3. 中間層の固化: トルリザチオを乾かした後、再度水で湿らせて漆喰を塗ります。
4. 下絵の描画: 中間層に下絵を描き、ジョルナータの区分を示します。
5. 上塗り層の仕上げ: 漆喰を準備し、顔料で描画を行います。

このように、フレスコ画は高い技術と精密な計画を必要とする芸術形式です。画家は漆喰の乾燥状態を見極め、迅速に作業を進める必要があります。

著名なフレスコ画

世界中に数多くの著名なフレスコ画が存在します。たとえば、バチカン市国のシスティーナ礼拝堂に描かれたミケランジェロの『最後の審判』や、ラファエロの『アテネの学堂』が挙げられます。これらの作品は、フレスコ技法の美しさと技術の高さを象徴するものとして、今もなお多くの人々に愛されています。

日本のフレスコ画

日本においてもフレスコ技法を用いた作品が制作されています。長谷川路可や絹谷幸二をはじめとするアーティストたちは、フレスコ技法を日本に取り入れ、普及させてきました。彼らの作品は、伝統的な技法と現代の感性を融合させた新しい芸術表現の一環として、多くの人々に感動を与えています。

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