カンマ (ドビュッシー)

クロード・ドビュッシーのバレエ音楽『カンマ』

『カンマ』（Khamma）L.125は、クロード・ドビュッシーが作曲した、全1幕3場からなるバレエ音楽です。元々はカナダの舞踊家モード・アランからの依頼で作曲が始まりましたが、様々な経緯を経て、ドビュッシー自身はピアノ版のみを作曲し、管弦楽版はシャルル・ケクランによって完成されました。

作曲の経緯

1911年、ドビュッシーはモード・アランからバレエ音楽の作曲を依頼されます。当初、ドビュッシーは乗り気ではありませんでしたが、経済的な事情もあり依頼を引き受けたとされています。同年後半から作曲に着手し、1912年1月にはピアノ譜を完成させ、4月にはオーケストレーションにも取り組みました。

しかし、アランが「シナリオに忠実に」「オーケストレーションは軽快に」といった注文を付けたため、ドビュッシーはこれに反発し、オーケストレーションを中断してしまいます。仲裁にジャック・デュランが入る事態となりました。その後、シャルル・ケクランが、ドビュッシーが既に書いていた数ページの楽譜を基に、ドビュッシーの指示に従ってオーケストレーションを完成させました。

初演

『カンマ』の初演は、ドビュッシーの没後となる1924年11月15日、ガブリエル・ピエルネの指揮、コンセール・コロンヌの演奏会で行われました。この時は演奏会形式での上演でした。バレエとしての上演は、1947年3月26日にオペラ・コミック座で、ギュスターヴ・クレの指揮、J.J.エッチェヴェリーの振り付けによって行われました。

作品について

モード・アランは、芸術的な質の高い作品を求めていたわけではなく、当時流行していた軽演劇を想定してドビュッシーにバレエ音楽を依頼したと言われています。ドビュッシーはこのような商業的な意図に否定的だったため、両者の意見が合わなかったと考えられます。結果として、アランは『カンマ』を上演することはありませんでした。また、作品の献呈者の名前は記されていません。

委嘱契約には「1910年9月30日」と記載されており、この時期、ドビュッシーは大作『聖セバスティアンの殉教』の作曲にも着手していました。ドビュッシー自身はバレエよりも『聖セバスティアンの殉教』に集中していたため、『カンマ』の作曲は後回しにされた状態でした。

ケクランが完成させた管弦楽版は、現在も未出版の状態です（IMSLPにはケクランによるオーケストラ譜が掲載されています）。

ドビュッシーは後にこの作品を気に入ったようで、改訂稿も作成しています。

筋書きと台本

物語は、「エジプトの伝説的な踊り子カンマが、敵に包囲された都市を救うため、償いの踊りを踊り、生け贄となった人々を救う」という内容です。台本は、オックスフォード大学の哲学助教授W.L.コートニーとモード・アランの共作です。

構成

『カンマ』は、前奏曲と3つの場から構成されています。全曲の演奏時間は約20分です（前奏曲：約1分、第1場：約3分半、第2場：約11分、第3場：約3分）。

1. 前奏曲（Prélude）
2. 第1場（Tableau 1）
3. 第2場（Tableau 2）
4. 第3場（Tableau 3）

参考文献

『作曲家別名曲解説ライブラリー10 ドビュッシー』（音楽之友社）
『ドビュッシー:管弦楽作品集』の解説書（アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団、デッカ）

外部リンク

* カンマの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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