カーズ (バンド)

カーズ (The Cars): ニュー・ウェイヴを代表するアメリカのロックバンド

カーズは、1976年にマサチューセッツ州ボストンで結成されたニュー・ウェイヴ・バンドです。リック・オケイセック（ボーカル、リズムギター）とベンジャミン・オール（ベース、ボーカル）を中心としたこのバンドは、1978年にメジャーデビューし、その革新的な音楽と独特のスタイルで瞬く間に人気を博しました。

キャリアの軌跡

カーズの成功は、地元FM局のDJが彼らのデモテープ「燃える欲望 (Just What I Needed)」を繰り返し放送したことから始まりました。リスナーからのリクエストが殺到し、レコード会社の注目を集め、デビューシングルとしてリリースされるとすぐにヒットしました。

デビューアルバム『錯乱のドライヴ/カーズ登場』は6xプラチナを獲得し、『キャンディ・オーに捧ぐ』は全米アルバムチャートで3位を記録、グラミー賞の最優秀新人賞にもノミネートされるなど、初期の作品から立て続けに成功を収めました。初期のアルバムはロック色が強かったものの、次第に実験音楽的な要素やポップな要素を取り入れ、アルバムごとに音楽性を変化させていきました。

MTVの開局は、カーズのキャリアにおいて重要な転換点となりました。彼らのユニークなミュージックビデオは評判を呼び、多くのヒット曲が生まれました。特に、アルバム『ハートビート・シティ』からは、「ユー・マイト・シンク (You Might Think)」をはじめとする4曲がチャートを賑わせ、第1回MTVアウォードを受賞しました。

最大のヒット曲「ドライヴ (Drive)」は、1985年のライヴエイドのテーマ曲として使用され、エチオピア飢餓の映像と共に世界中に放送され、大きな注目を集めました。しかし、アメリカでの成功とは対照的に、日本ではあまり人気が出ませんでした。

音楽性とアートワーク

リック・オケイセックが主に作詞・作曲を担当し、他のメンバーも作曲やジャケットデザインに貢献しました。彼らのアルバムジャケットは、その優れたアートワークでも評価されています。また、オケイセックとベンジャミン・オールが曲によってリードボーカルを分け合うスタイルも特徴的でした。

解散と再結成、そしてメンバーの死

1988年、カーズは特に説明もなく解散しました。アルバム『ドア・トゥ・ドア』の音楽性の多様化がファンを戸惑わせ、セールスが伸び悩んだことが原因の一つと言われています。その後、メンバーはソロ活動に専念しましたが、2000年にベンジャミン・オールが癌で死去し、オリジナルメンバーでの再結成は不可能となりました。

2005年には、オリジナルメンバーのエリオット・イーストンとグレッグ・ホークスが、トッド・ラングレンをボーカルに迎えて「ニュー・カーズ」を結成し、カーズのヒット曲を中心にライブ活動を行いました。2010年には、リック・オケイセックを含むオリジナルメンバーで再結成を果たし、2011年には24年ぶりとなるアルバム『ムーヴ・ライク・ディス』をリリースしました。

しかし、リック・オケイセックは2019年に心臓病で亡くなり、再びオリジナルメンバーでの活動は途絶えました。

メンバー

リック・オケイセック (Ric Ocasek): ボーカル、リズムギター (1944年3月23日 - 2019年9月15日)
ベンジャミン・オール (Benjamin Orr): ボーカル、ベース (1947年8月9日 - 2000年10月3日)
エリオット・イーストン (Elliot Easton): ギター (1953年12月18日生)
グレッグ・ホークス (Greg Hawkes): キーボード (1952年10月22日生)
* デヴィッド・ロビンソン (David Robinson): ドラム (1953年4月2日生)

カーズは、その革新的な音楽とスタイリッシュなイメージで、ニュー・ウェイヴの時代を象徴するバンドとして、今もなお多くのファンに愛されています。

もう一度検索