カーナーヴォン城

カーナーヴォン城：ウェールズの雄大な城塞

カーナーヴォン城は、ウェールズ北西部グウィネズ州カーナーヴォンに位置する、中世を代表する城塞です。イングランド王エドワード1世が、1283年のウェールズ征服後、支配強化と威圧の象徴として建設に着手しました。その歴史は古く、ローマ時代の砦、ノルマン時代の城へと続く長い歴史を刻み、幾多の戦乱や変遷を経験しながら、現在もその威容を誇っています。

歴史：ローマ時代から現代まで

ローマ時代の砦

西暦75年頃、ローマ人はカーナーヴォンに「セゴンティウム」と呼ばれる砦を築きました。セイオント川の河口という戦略的に重要な場所に位置するこの砦は、ローマ街道の拠点としても機能していました。このローマ人の砦こそが、カーナーヴォンという地名のもとになっています。

ノルマン時代の城

イングランドのノルマン征服後、ノルマン人のロバート・オブ・リズランがウェールズ北部を支配し、カーナーヴォンにも城を築きました。この城は、木造の塔を持つモット・アンド・ベーリー式と呼ばれる構造でした。しかし、12世紀初頭にはウェールズ勢力に奪還され、グウィネズ王国の一部となりました。

エドワード1世による建設

エドワード1世は、1282年にウェールズ大公ルウェリン・アプ・グリフィズを討ち、ウェールズ征服を進めました。その支配を確固たるものとするため、カーナーヴォンに新たな石造りの城を建設することを決定。熟練の建築家マスター・ジェイムズを指揮官に据え、大規模な工事が開始されました。城の建設と同時に、町を取り囲む市壁も建設され、城と一体となった堅固な防御施設が築かれました。建設には莫大な費用と、数多くの労働力が投入されました。エドワード1世と王妃エリナーは、建設中の城に滞在し、1284年には彼らの王子エドワード（後のエドワード2世）が城内で誕生しました。この出来事が、後に「プリンス・オブ・ウェールズ」の称号とカーナーヴォン城を深く結びつけることになります。

中世後期以降

13世紀後半以降、カーナーヴォン城はウェールズ北部の行政の中心地として重要な役割を果たしました。しかし、1400年から1415年にかけて起きたグリンドゥールの反乱では、オワイン・グリンドゥール軍による包囲攻撃を受けました。反乱鎮圧後、テューダー朝の成立によりウェールズとイングランド間の緊張が緩和されると、カーナーヴォン城は徐々に衰退していきました。イングランド内戦時代には一時的に王党派の拠点となりましたが、1646年に議会派に明け渡されたのを最後に、軍事的な役割を終えました。

19世紀以降の修復

19世紀後半、政府はカーナーヴォン城の修復に着手しました。城の修復作業は、既存の石積みを保存しつつ、多くの場合議論を巻き起こすような復元も行われました。城の景観は大きく変化し、歴史的意義から保存されることになります。

現代

現在、カーナーヴォン城はウェールズ政府の歴史的環境保全機関カドゥによって管理されています。1986年には、「グウィネズのエドワード1世の城郭と市壁」の一部としてユネスコの世界遺産に登録され、世界的な重要性が認められました。現在でも多くの観光客が訪れる、ウェールズを代表する観光地となっています。また、1911年と1969年には、プリンス・オブ・ウェールズの叙位式典が開催されました。

構造と特徴

カーナーヴォン城は、東西に長く、8の字のような形をした城郭です。城内は内郭と外郭に分けられ、王室の宿泊施設や台所、大広間などの建物が配置されていました。しかし、これらの建物は多くが完成していません。城壁に沿って、多角形の塔が配置されており、優れた防御能力を備えていました。

カーナーヴォン城の建築様式は、他のエドワード時代の城とは異なり、壁面には縞模様の石材が使用されています。この独特のデザインは、エドワード1世の権威を示すものとして、また、ローマ帝国時代のブリテンへのつながりを示唆するものとして解釈されています。

城には、町から通じる「王の門」と、直接城内に入る「王妃の門」の2つの主要な入り口があります。これらの門は、当時としては典型的な様式で、複数の扉や落とし格子、矢狭間によって厳重に守られていました。

プリンス・オブ・ウェールズの叙位式

カーナーヴォン城は、「プリンス・オブ・ウェールズ」の叙位式典の開催地として知られています。1911年にはエドワード8世、1969年にはチャールズ3世がここで叙位式典を行いました。この伝統は、1284年にエドワード1世の王子エドワードがカーナーヴォン城で生まれたという伝説に由来していると言われています。

まとめ

カーナーヴォン城は、歴史、建築、文化が凝縮されたウェールズの象徴的な建造物です。その壮大な城壁、複雑な構造、そして数々の歴史的出来事は、訪れる人々を魅了し続けています。現在も保存・修復され、世界遺産として保護されています。今後も、多くの観光客が訪れる、ウェールズの誇りとなるでしょう。

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