カーボンコピー

カーボンコピー (Carbon Copy)

カーボンコピー（Carbon Copy）、略してCCとは、古くはカーボン紙を用いて文書を複写する手法、あるいはその手法によって作られた複写文書そのものを指す言葉です。この手法は、原本となる書類と控え（副本）とする書類の間にカーボン紙を挟み込み、その上から筆記具やタイプライターで記述することで、一度の筆記で全く同じ内容の文書を同時に二枚作成するというものです。電気式の複写機や高性能なプリンターがまだ普及していなかった時代には、文書の複写を行うための最も一般的かつ主要な手段として広く利用されていました。

現代の利用形態

現代においては、伝統的なカーボン紙を用いた複写の機会は少なくなりましたが、その原理を受け継いだ形での利用は見られます。例えば、多枚複写式の伝票や申込用紙などでは、カーボン紙の代わりに圧力を加えることで発色する特殊な加工が施されたノーカーボン紙が一般的に使用されています。これにより、手書きやドットインパクト式プリンターによる印字によって、原本を含む複数枚の伝票や証書（例えば領収書など）を同時に作成することが可能となっています。特に連続式のノーカーカーボン紙伝票とドットインパクトプリンターの組み合わせは、事務処理の効率化に貢献しています。

電子メールにおける転用 (CC / BCC)

また、「カーボンコピー」という言葉は、コンピューターや情報技術の発展に伴い、電子メールの機能の一つとして全く新しい文脈で用いられるようになりました。電子メールにおけるCC機能は、メッセージの本来の宛先であるTo欄に指定された受信者だけでなく、CC欄にアドレスが入力された全てのユーザーに対しても、全く同じ内容のメールを同時に送信する機能です。To欄に指定された受信者を含め、CC欄に誰が指定されているかは全ての受信者に対して表示され、メールの情報を共有している関係者を示す役割を果たします。

これに似た機能としてBCC（Blind Carbon Copy）があります。BCCもまた、複数の受信者に対して同一内容のメールを一斉送信する点ではCCと同様ですが、BCC欄に入力された受信者のアドレスは、ToやCC、さらには他のBCC受信者に対しても一切表示されないという点が大きく異なります。「Blind」という名称が示す通り、受信者リストを秘匿したい場合に非常に有用です。例えば、企業が多数の取引先に対して同じ告知メールを送信する場合など、受信者同士がお互いのアドレスを知らないようにしたい場面でBCCが活用されます。

比喩的用法

さらに、「カーボンコピー」は、元来の「同じものを同時に作成する」という性質が転じて、比喩的な表現としても使われるようになりました。この場合の「カーボンコピー」は、オリジナリティや創意工夫が感じられず、まるで既存のものや他者のものをそのまま写し取ったかのような、模倣品や引き写し、丸写しといったネガティブな意味合いで用いられます。特に、独創性や独自性が求められる文脈において、安易な模倣やコピーを批判する際に使われます。「参議院は衆議院のカーボンコピーか」といった表現は、参議院が独自の審議や判断を行わず、衆議院の決定をただ追認するだけではないかという批判的なニュアンスを含んでいます。

このように、「カーボンコピー」という言葉は、複写技術から電子通信、そして比喩表現へと、時代と共にその意味合いを広げてきた興味深い語彙と言えます。

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