カーボン紙

カーボン紙：手書き文字複写の技術

カーボン紙は、書類の間に挟んで手書き文字を複写するための紙です。略して「カーボン」と呼ばれることもあります。その仕組みは、筆記する際の筆圧がカーボン紙、そしてその下の紙へと伝わり、カーボン紙の下面に塗布されたインクが下の紙に転写されるというものです。この技術は、コピー機が普及する以前の事務作業において、なくてはならない存在でした。また、インパクトプリンタの複写用紙としても使用されていました。

カーボン紙の用途と種類

コピー機のない時代、事務作業ではカーボン紙が文書複写の主流でした。黒色や青色のインクが用いられ、筆記用紙と複写用紙の間にカーボン紙を挟んで筆記することで、筆圧によって文字が複写されました。

初期には、鉛筆書きの文書を正確に記録するために、紙3枚重ね（鉛筆書き、正本、控え）で使用されることもありました。ボールペンの普及とともに、2枚重ね（正本、控え）の使用が一般的になりました。このように、用紙の間に挟んで使うカーボン紙は「ワンタイムカーボン紙」と呼ばれます。

その後、より簡便な「裏カーボン紙（バックカーボン紙）」が登場しました。これは、伝票などの用紙の裏面に直接カーボンが塗布されているため、カーボン紙を挟む必要がありません。さらに、複写が必要な部分にのみカーボンを塗布した「スポットカーボン」も開発されました。

これらのカーボン紙は、手書き入力伝票などに多く使用されましたが、感圧発色型の複写用紙（ノーカーボン紙）の登場により、次第にその需要は減少していきました。ノーカーボン紙は、紙自体が筆圧によって発色するため、カーボン紙を挟む必要がありません。

また、大量複写を目的とした「ヘクトカーボン」という技術もありました。これは、印字と同時に複写するのではなく、後処理で大量に複写するための技術です。

カーボン紙の歴史

カーボン紙の発明は1806年、イギリスのラルフ・ウェッジウッドにまで遡ります。その後、長年にわたって事務作業に貢献してきましたが、1954年にアメリカ合衆国のNCR社がノーカーボン紙を発明したことで、カーボン紙の需要は減少しました。

燃料電池における「カーボンペーパー」

燃料電池で使用される「カーボンペーパー」は、文書複写用のカーボン紙とは全く異なるものです。これは、炭素でできたマイクロファイバーを平らなシート状にしたもので、膜電極アセンブリの触媒層を通して試薬を拡散させるための電極として使用されます。

まとめ

カーボン紙は、コピー機の普及以前の時代において、文書複写に欠かせない存在でした。その簡便さと実用性から、長年にわたって様々な場面で使用されてきました。しかし、ノーカーボン紙などの登場により、その需要は減少。現在では、主にレトロなアイテムとして認識されているかもしれません。一方、燃料電池に使用される「カーボンペーパー」は、全く異なる用途を持つ技術です。これらの違いを理解することは、技術史を理解する上で重要です。

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