カーリル

カーリルとは

カーリルは、株式会社カーリルが運営する図書館の蔵書検索サービスです。日本国内の多数の図書館を対象に、蔵書の貸し出し状況などを横断的に検索できるのが最大の特徴です。2010年3月にサービスが開始され、現在では6000以上の図書館の蔵書を検索できます。図書館検索用のAPIも公開しており、他の開発者によるスマートフォンアプリやブラウザ拡張機能の開発も活発に行われています。

サービスの沿革

カーリルは、元々Nota Inc.と有限会社アール・ワイ・システムの共同開発によって誕生しました。Nota Inc.代表の洛西一周氏が、既存の図書館システムの使いにくさに課題を感じ、開発合宿中に図書館サービスのアイデアが生まれたそうです。開発期間はわずか2ヶ月という短期間で、ラピッドプロトタイピングという手法を採用し、プロトタイプの作成とフィードバックを繰り返すことで開発スピードを上げました。開発チームは少人数で、Skypeなどを活用してコミュニケーションを取りながら開発を進めました。

サービス開始当初は、Amazonのデータベースをベースに書誌情報を取得していましたが、後にCiNii Booksや国立国会図書館サーチなども利用するようになり、より多くの書籍情報を網羅できるようになりました。2012年6月には株式会社カーリルが設立され、カーリルのサービスは同社に移管されました。

サービスの特徴

カーリルは、「本を発見し出会う楽しみ」を追求し、「楽しい蔵書検索」と「図書館利用のきっかけとなること」を目標としています。そのため、漠然と面白い本を探したいというユーザーでも、気軽に本と出会えるような仕組みが提供されています。また、デザインにもこだわりがあり、本のイメージにとらわれず、雲や山、街の風景などを配置したポップな画面デザインが特徴的です。

システムについて

カーリルは、Pythonで構築されており、クラウドサーバーであるGoogle App Engineと通常サーバーを組み合わせたハイブリッド方式で運用されています。蔵書情報の取得にはスクレイピング技術を活用し、APIを持たない図書館の蔵書情報も取得しています。このHTML解析が最も運営費がかかる部分だそうです。

検索エンジンは図書館からの応答に依存するため、必ずしも高速ではありませんが、アニメーション表示などの工夫によって早く感じられるようにしています。また、並列処理を行うことで、都道府県をまたがる横断検索でも効率的に結果を表示できるようにしています。

ただし、過去には図書館へのアクセスが集中し、システム障害を引き起こした事例もあります。しかし、これは図書館側のシステム不具合によるものであり、カーリル側のアクセス過多が原因ではないことが後に判明しています。

提供サービス

カーリルは、無料で利用できます。収益源は、Amazonなどのアフィリエイト広告や、出版会社などへのデータ解析サービス提供です。

「カーリルローカル」では、検索対象の図書館を自由に組み合わせて、カスタム検索を公開できます。「本のレシピ」では、おすすめの本リストを公開したり、図書館が公開するレシピを閲覧することも可能です。また、図書館APIを利用することで、他の開発者が様々なサービスを開発しています。例えば、Amazonのページから図書館の貸出予約ができるLibronや、書店・図書館の在庫状況を確認できるTakestockなどがその例です。

連携サービス

国立国会図書館サーチをはじめ、様々なサービスと連携しています。スマートフォンをかざすことで図書館の情報を得られる「カーリルタッチ」は、いくつかの図書館で導入されています。また、名古屋大学附属図書館では、館内の書架ナビゲーションサービスの実証実験も行われています。NTTドコモのiコンシェルサービスでは、本の貸し出しが可能になった際に通知するサービスも提供しています。

評価・受賞歴

カーリルは、日本国内最大級の図書横断検索サイトとして広く認知されており、既存のサービスと比較して使いやすいと評価されています。また、図書館利用を促進する効果も高く、カーリルを知ってから図書館を利用するようになったという声も多く寄せられています。さらに、カーリルの登場をきっかけに、図書館が書影を表示するケースも増えており、図書館サービスの向上にも貢献しています。

オープンデータの活用事例としても注目されており、経済産業省のIT融合フォーラムでは、オープンデータをビジネス化した成功事例として紹介されました。また、オープンデータに関する優れた取り組みに対して、複数の賞を受賞しています。

カーリルは、図書館と利用者を繋ぐ重要なサービスとして、今後も発展が期待されています。

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