カール・アンドレ

カール・アンドレ（Carl Andre, 1935年9月16日 - 2024年1月24日）は、アメリカ合衆国の彫刻家、詩人であり、ミニマル・アートの重要な人物として知られています。彼の作品は、既存の彫刻の概念を大きく変え、後の美術に多大な影響を与えました。

生涯と作品

1935年、アンドレはマサチューセッツ州クインシーで生まれました。1950年代には、彫刻家コンスタンティン・ブランクーシの影響を受け、木材を組み合わせた立体作品を制作しました。この時期の作品には、『ピラミッド』（1959年）などがあります。

1958年から1959年にかけて、アンドレはフランク・ステラとアトリエを共有し、ステラの直線や単色を基調とした画面構成に影響を受けました。この経験から、アンドレは作品を構成する要素を最小限に抑えるという、ミニマルな表現へと移行していきます。

1966年、アンドレは耐火レンガを床に一列に並べた作品『レヴァー（てこ）』を発表しました。この作品は、素材を加工せずにそのまま用いるという、彼の後の作品の特徴を決定づけるものでした。レンガ、金属、石などの素材を、床に直接配置する手法は、彫刻のあり方を根本から問い直すものであり、それまでの彫刻の概念を大きく変えるものでした。

アンドレの作品は、展示される空間を考慮して制作されるという特徴があります。展示空間のサイズや採光などの要素と関連を持たせ、その場に特有のインスタレーション作品を構成しました。これらの作品は、サイトスペシフィックなアートとして、鑑賞者に空間全体を意識させる体験をもたらしました。

アンドレは前衛的な詩の作品も発表し、ベトナム戦争に反対する運動にも積極的に関わるなど、政治的な関心も強く持っていました。

1978年には、東京・南青山のアート・エージェンシー・トウキョウで個展を開催し、初来日しました。この展覧会では、105枚のアルミニウム板を用いた作品『14個のアルミニウム基数第Ｘ番』を発表しました。この作品は、入口から右側に1枚、次に左に2枚、次いで右に3枚と配置していくことで、14個の形態を創出するものでした。

1985年、アンドレはアナ・メンディエタと結婚しましたが、同年、メンディエタが窓から転落し死去。この事件でアンドレは殺人容疑で逮捕されましたが、後に無罪となりました。この事件は、アート界に大きな波紋を呼び、多くの議論を呼び起こしました。

2024年には、アンドレの回顧展「カール・アンドレ　彫刻と詩、その間」（DIC川村記念美術館）が開催されました。彼の長年の活動を振り返るこの展覧会は、彼の作品が今日においても重要な影響力を持っていることを示しました。

2024年1月24日、カール・アンドレは88歳で亡くなりました。彼の作品と芸術に対する貢献は、今後も多くのアーティストや鑑賞者に影響を与え続けるでしょう。

外部リンク

* グッケンハイム美術館によるバイオグラフィー

もう一度検索