カール・ゴッチ

カール・ゴッチ：プロレス界の「神様」

カール・ゴッチ（Karl Gotch, 本名：Charles "Karel" Istaz, 1924年8月3日 - 2007年7月28日）は、ベルギー・アントワープ出身のプロレスラー、そしてプロレスのトレーナーとして名を馳せました。その卓越したレスリング技術と、ストイックなトレーニング哲学は、日本のプロレス界に深く根付き、「ゴッチイズム」として今もなお語り継がれています。

生涯

ゴッチはベルギーで生まれ、幼少期にドイツのハンブルクに移住。青少年時代からグレコローマンスタイルレスリングを学び、アマチュア選手として活躍しました。第二次世界大戦後には捕虜収容所でサンボを習得。その後、アマレス界に復帰し、ベルギー王座を何度も獲得。1948年のロンドンオリンピックにはベルギー代表として出場しました。

1950年にプロレスラーとしてデビューし、ヨーロッパ各地で活躍。イギリスのビリー・ライレージムでキャッチ・アズ・キャッチ・キャンを学びました。1959年にカナダ、1960年にアメリカに進出し、カール・クラウザーのリングネームで活動。1961年にカール・ゴッチと改名しました。

1961年に初来日。その卓越した技術は日本のプロレスファンを魅了しました。1968年からは日本プロレスのコーチに就任し、アントニオ猪木、山本小鉄、星野勘太郎らを指導。「プロレスの神様」と称えられました。

引退後はフロリダ州タンパで後進の育成に尽力。藤波辰巳、木戸修、藤原喜明、佐山聡、前田日明など、数多くの名レスラーを育て上げました。

2007年7月28日、フロリダ州タンパで82歳で逝去。

功績

ゴッチの最大の功績は、その技術と哲学を日本のプロレス界に根付かせたことです。アントニオ猪木に伝授した卍固めやジャーマン・スープレックスは、猪木の代名詞とも言える必殺技となりました。また、ゴッチの指導を受けたレスラーたちは、「ストロングスタイル」と呼ばれる独自のスタイルを確立し、日本のプロレス界を牽引しました。

ゴッチは、レスリング技術だけでなく、トレーニング方法にも独自の哲学を持っていました。フリーウエイトを使わず、自重トレーニングを重視。筋肉をコントロールする能力を高めることを重視しました。そのトレーニング方法は、「ゴッチ式トレーニング」として、多くのレスラーに影響を与えました。

人物像

ゴッチは、そのストイックな性格と、妥協を許さない姿勢から、一部のプロモーターには煙たがられることもありました。しかし、その技術と哲学を高く評価するレスラーも多く、ルー・テーズやビル・ミラーなど、多くのレスラーから尊敬を集めました。

ゴッチは、日本の武道にも造詣が深く、宮本武蔵を尊敬し、『五輪書』を愛読していました。武蔵の心境に近づくために、プロレスラーとして試合をしなくなってからもトレーニングを続けていたと言われています。

エピソード

ゴッチは、歯が痛くなると「歯があるから痛くなる」と言い張り、歯医者に無理矢理全ての歯を抜かせたという逸話があります。
ゴッチは、新日本プロレス旗揚げの際に、日本プロレスの圧力で外国人レスラーを呼べなかった新日本プロレスに、自ら出場を申し出ました。また、無名ながら実力のあるレスラーをブッキングするなど、新日本プロレスの発展に大きく貢献しました。

カール・ゴッチは、その卓越した技術と哲学で、日本のプロレス界に多大な影響を与えた、まさに「プロレスの神様」と呼ぶにふさわしい人物でした。

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