カール・ヨハン・ファールクランツ

カール・ヨハン・ファールクランツ

カール・ヨハン・ファールクランツ（Carl Johan Fahlcrantz、1774年11月29日 - 1861年11月29日）は、18世紀末から19世紀にかけて活動したスウェーデンの風景画家です。同国における近代風景画の発展に多大な貢献をし、「スウェーデンの風景画の父」と称されています。

生涯

ファールクランツは、スウェーデン中部、ダーラナ地方のファールン近郊にあるストーラ・トゥーナに生まれました。父は牧師であり、彼自身もまた牧師の道を歩むことが期待されていましたが、早くから美術への強い関心を示します。16歳になった彼は、その情熱に従い、単身ストックホルムへと旅立ちました。

ストックホルムでは、まずスウェーデン王立歌劇場で初めての専属舞台美術家を務めたヨハン・ゴットロブ・ブルセルに師事し、芸術の基礎を学びました。その後、1792年にはスウェーデン王立美術院の美術学校に入学。ここでは装飾画家のペル・エマヌエル・リムネルや、特に風景画家のエリアス・マルティンから本格的な指導を受け、画技を磨きました。

さらに、フランス革命の動乱を逃れて1798年にストックホルムに移住してきたフランス人画家ルイ・ベランジェとの出会いが、彼のキャリアにおける重要な転機となります。ベランジェはフランス宮廷画家であり、ストックホルムでは王立美術院の教授を務めていました。ファールクランツはベランジェのもとで風景画、特に大画面の作品の制作に取り組み、その才能が開花。彼の作品はすぐに注目を集めるようになりました。

その功績が認められ、1803年にはスウェーデン王立美術院の会員に選出されます。1805年には、歴史画家であるグスタフ・エリック・ハッセルグレンと共に、国外留学のための奨学金を受ける資格を得ました。これにより、当時の芸術の中心地であったイタリアへの留学の機会が現実のものとなるはずでした。

しかし、時はナポレオン戦争の時代であり、スウェーデンはナポレオンが支配する勢力圏と敵対関係にありました。ヨーロッパ全土が不安定な情勢にあったため、長らくイタリアへの渡航は困難な状況が続き、結局、待ち望んだ留学は実現しませんでした。留学奨学金は、やむなく国内での活動へと振り替えられることになります。ファールクランツは、奨学金を利用してスウェーデン国内各地を旅し、その美しい風景を精力的に描くこととなりました。この期間中、彼は年に2点の作品を美術院に提出することが義務付けられていました。

国外への旅行は非常に限られており、1829年にノルウェーとデンマークを訪れたのが唯一の例外です。しかし、国内で描かれた彼の風景画は、スウェーデンの自然の美しさを捉え、高く評価されました。

教育者としても活躍し、1815年にはスウェーデン王立美術院の教授に就任。後進の指導にあたりました。その名声は国外にも広まり、デンマークやアメリカ合衆国のニューヨーク、フィラデルフィアにある美術アカデミーの名誉会員にも選ばれています。

カール・ヨハン・ファールクランツは、国外で学ぶ機会に恵まれずとも、スウェーデン国内の風景に深く向き合い、その写実的かつ情感豊かな表現によって、スウェーデンにおける風景画の地位を高め、後世の画家たちに大きな影響を与えました。彼の作品は、現代においてもスウェーデンの自然美を描いた傑作として愛されています。

家族

ファールクランツ家は芸術家や文化人を多く輩出しています。弟には彫刻家となったアクセル・マグヌス・ファールクランツ（Axel Magnus Fahlcrantz、1780-1854）や、神学者・作家として知られるクリスティアン・エリック・ファールクランツ（Christian Eric Fahlcrantz、1790-1866）がいます。また、彼の父親の親族には出版に携わる人物が多く、叔父にも画家がいました。

カール・ヨハン・ファールクランツは、その長い生涯を通じて、スウェーデンの風景を描き続け、その功績から「スウェーデンの風景画の父」として、今なお記憶されています。

現在に至るまで高く評価されています。

（※注：原文にある作品画像のリストは本記事では割愛しています）

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