ガイ (ゴリラ)

ロンドン動物園のスターゴリラ、ガイ：穏やかな巨人とその波乱に満ちた生涯

1946年生まれのニシローランドゴリラ、ガイは、ロンドン動物園で長年暮らしたゴリラとして広く知られています。1960～70年代には、動物園で最も人気のある動物の一頭で、子供向け番組や野生動物ドキュメンタリーにも頻繁に登場しました。5月30日の誕生日には、多くのバースデーカードが届いたほど愛されていました。

ガイは、1947年11月5日、ガイ・フォークス・ナイト（イギリスの伝統行事）にロンドン動物園にやってきました。その日にちなんで「ガイ」と名付けられた彼は、花火の音に驚き、飼育係にしがみつくほど怖がりだった幼少期を過ごしました。体重はわずか約10キロで、小さな箱に入れられ、ブリキの湯たんぽを抱えていたといいます。当時の新聞記事には、飼育係とじゃれ合うやんちゃな様子も記されています。

実はガイは、パリの動物園から、シマウマやトラと交換される形でロンドン動物園にやってきました。当初は、フランス領カメルーンで捕獲されたものでした。ロンドン動物園は、ガイのためにつがいのメスを探し続け、1969年にチェシントン動物園からロミーというメスのゴリラを迎えます。しかし、人間に育てられたガイは、ロミーとの間に子供をもうけることはありませんでした。

ガイは、その巨体も有名でした。1966年と1971年の測定によると、体重は約236キロ、身長は約163センチ、腕を広げると約274センチにも及びました。しかし、その巨体とは裏腹に、ガイは穏やかな性格で知られていました。檻の中に迷い込んだ小鳥を優しく手の上に乗せて、その後逃がしてやる姿は、多くの人々の心を掴みました。

ハリウッド映画『2001年宇宙の旅』の制作にあたっては、俳優がガイの行動を研究し、映画の中のゴリラの演技に反映されたという逸話もあります。

1978年、ガイは虫歯治療中に心臓発作を起こし、31歳または32歳で亡くなりました。死因は、肥満と虫歯でしたが、これは来園者から大量の甘いお菓子を与えられていたことが原因でした。彼の死は、多くの人々に衝撃を与え、動物園には抗議の手紙が殺到したそうです。

ガイの死後、彼の遺体はロンドン自然史博物館に運ばれ、9ヶ月かけて剥製にされました。1982年11月に公開展示された後、現在は博物館の科学的研究コレクションに移されていますが、2012年には再び一般公開されています。また、ガイの銅像はロンドン動物園の入口付近に建立され、彼の生涯を偲ばせています。

ジェーン・グドールやダイアン・フォッシーといった霊長類学者の研究が、人々の動物に対する認識を変えていく中で、ガイはロンドン動物園の歴史に深く刻まれた存在です。彼の穏やかな性格と、多くの人々から愛されたその生涯は、今もなお語り継がれています。彼の物語は、動物園における動物福祉、そして人間と動物との関わりについて、改めて考えるきっかけを与えてくれます。

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