ダイアン・フォッシー

ダイアン・フォッシー：霧の中のゴリラとその生涯

ダイアン・フォッシー(1932-1985)は、ジェーン・グドール、ビルーテ・ガルディカスと並び称される、世界的に著名な霊長類学者です。彼女は18年に渡り、ルワンダの火山国立公園でマウンテンゴリラの生態調査を行い、その知見は類まれなものです。しかし、その輝かしい功績の裏には、危険と隣り合わせの過酷な環境と、密猟者との壮絶な闘いがありました。1985年、彼女は自身の研究拠点であるカリソケ研究センターで何者かによって殺害され、その死は未解決のまま現在に至っています。

幼少期と教育

1932年、サンフランシスコで生まれたフォッシーは、両親の離婚を経験し、再婚した義父からは冷遇を受けました。しかし、幼い頃から動物を愛し、特に馬術に秀でていました。当初は経営学を専攻していましたが、動物への情熱を断ち切れず、獣医学へと転向。経済的苦労をしながらも、作業療法士の資格を取得します。その後、カリフォルニア州の病院で働きながら、馬術家としても活動。ケンタッキー州のコサイア障害児病院勤務時代には、子供たちとの触れ合いの中で、温かい人間関係を築き始めました。

アフリカへの旅とゴリラとの出会い

1963年、フォッシーはアフリカへの旅に出ます。この旅は、後に彼女の人生を大きく変える転機となります。ケニアで出会った古生物学者ルイス・リーキーとの出会いが、彼女をゴリラ研究の道へ導きました。リーキーは、フォッシーのゴリラへの強い関心と、既に発表していた論文に注目し、マウンテンゴリラの研究を提案。フォッシーは、スワヒリ語と霊長類学を猛勉強し、アフリカでの研究生活に備えました。

コンゴとルワンダでの研究活動

1967年、フォッシーはコンゴのヴィルンガ山地でマウンテンゴリラの調査を開始。しかし、コンゴの政治情勢は不安定で、内戦を逃れてルワンダへ移ります。ルワンダの高地にカリソケ研究センターを設立し、長年に渡りゴリラの観察と研究に打ち込みました。彼女の研究は、ゴリラの社会構造、コミュニケーション、行動パターンなど、多くの重要な知見をもたらしました。ゴリラの個体識別には、ゴリラの鼻紋を用いるという独創的な手法も用いました。

密猟との闘い

フォッシーの研究活動は、密猟という大きな課題に直面することになります。ヴィルンガ山地は禁猟区でしたが、賄賂によって密猟が横行していました。フォッシーは、密猟によって多くのゴリラが殺されるのを目の当たりにし、激しい怒りと悲しみを感じました。彼女は、密猟者への対抗手段として、自ら資金を集め、現地スタッフを雇って監視活動を行い、密猟者の罠を破壊するなど、危険を顧みず、ゴリラの保護に尽力しました。 時には、密猟者を逮捕し、厳しく罰するなど、強硬な手段に出ることもありました。

観光への反対

一方、フォッシーはゴリラ保護の観点から、観光によるゴリラへの影響を危惧し、野生動物観光に反対しました。ゴリラは人間の伝染病に抵抗力が弱く、観光客からの感染の危険性を指摘。ゴリラの平穏な生活を脅かすとして、観光客の立ち入りを制限しようとしたこと、また、動物保護団体が主催する見学ツアーにも反対しました。

ディジット基金と悲劇的な死

フォッシーは、彼女が特に可愛がっていたゴリラ、ディジットが密猟によって殺害されたことをきっかけに、ディジット基金を設立。密猟対策のための資金調達活動を行い、その活動はより強硬な姿勢へと移行していきました。しかし、1985年12月26日、フォッシーは自身の小屋で殺害され、その生涯を閉じます。彼女の死は、ゴリラ保護活動への大きな損失となりました。

フォッシーの遺産

フォッシーの死後、ディジット基金はダイアン・フォッシー国際ゴリラ基金と改称され、現在もゴリラの保護活動を継続しています。彼女の研究成果は、マウンテンゴリラ保護の重要な基礎となっています。彼女の功績は、映画「愛は霧のかなたに」でも描かれており、多くの人に知られています。フォッシーの生き様は、動物保護活動家だけでなく、多くの人々に感動と勇気を与え続けています。彼女の情熱と献身は、現代においても、野生動物保護の重要性を訴えかけています。

科学的業績

フォッシーの研究は、ゴリラの社会構造、コミュニケーション、行動パターンに関する多くの重要な知見をもたらしました。特に、ゴリラのメスがグループ間を移動すること、発声の解析、グループ内の個体の階層やグループ間の関係、子殺し、食事などについての観察結果は、ゴリラ研究に大きな貢献を果たしました。

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