ガイド星星表

ガイド星星表（Guide Star Catalog, GSC）

ガイド星星表（Guide Star Catalog、略称：GSC）は、ハッブル宇宙望遠鏡（HST）が観測対象を正確に捉えるために使用するガイド星を選択する目的で作成された恒星カタログです。この星表は、宇宙空間での精密な姿勢制御と観測計画の遂行を可能にするために不可欠なツールであり、外宇宙の航行を支援するために特別に編纂された初めての全天カタログとしても知られています。当初のバージョンであるGSC-Iは視等級6等から15等の約2000万個の恒星を含んでいましたが、大幅に拡張されたGSC-IIでは視等級21等までの約9億4500万個を超える恒星が収録されています。HSTのファイン・ガイダンス・センサー（FGS）による位置測定に適さない二重星や銀河などの非恒星天体は、可能な限りカタログから除外されるか、識別用のフラグが付与されています。

歴史

1.0版

ガイド星星表の最初のバージョンは、1989年に公開されました。この版の作成には、北半球についてはパロマー・シュミット望遠鏡によるクイックVサーベイ、南半球についてはUKシュミット望遠鏡によるSERC-Jサーベイで撮影されたデジタル写真乾板のデータが利用されました。カタログには、視等級7等から16等の天体が収められ、恒星以外の天体はガイド星として使用されないように分類が行われています。天体の位置は、写真乾板の赤緯情報に基づき、AGK3、SAOC、CPCといった既存の星表を参照して特定されました。HSTが必要とする高い位置精度は約0.3秒角ですが、この初期バージョンでは写真乾板の端に近い領域などでは1秒角から2秒角程度の誤差が生じることが確認されていました。

1.1版

1992年には、ガイド星星表の最初の改訂版がリリースされました。この改訂版では、ヒッパルコス衛星計画のために作成されたティコ入力星表（Tycho Input Catalog）から、11等級までの明るい恒星のデータが追加されました。これにより、GSCは限界等級までの全天をカバーする、より完全なカタログへと進化しました。また、写真乾板上のハローや回折像などのアーティファクトに起因する偽の天体記録や、報告されていた多くの誤りについても修正が行われました。特に、3等級より暗い南半球の明るい恒星の周辺領域をカバーする多数の写真乾板が新たにスキャンされ、カタログに追加されています。この1.1版は、HSTのミッションサイクル15まで実際に運用を支えました。

1.2版

2001年には、ハイデルベルクの天文計算研究所との共同作業によって開発された1.2版が登場しました。このバージョンでは、写真乾板に基づく位置決定に伴う等級に依存した誤差を低減することが主な目標でした。PPM星表やカルト・デュ・シエルといった高精度な参照星表を利用することで、天体位置の絶対誤差は0.3秒角から0.4秒角へと大幅に改善されました。

GSC-II

ガイド星星表は、GSC-IIとして大幅な拡張を遂げ、2008年に公開されました。この新しい星表は、宇宙望遠鏡科学研究所のカタログ・サーベイ部門が中心となって編纂されました。GSC-IIには、視等級21等までの約9億4559万個を超える天体が収録されており、そのうち約4億5585万個の天体について、位置、分類、および等級の詳細な情報が提供されています。最新版である2.3.2版は、現在もハッブル宇宙望遠鏡の精密な天体位置特定と追尾のために不可欠な役割を果たしています。

星表データの参照形式

ガイド星星表に収録されている個々の天体を引用する際には、特定のフォーマットが用いられます。一般的には、「GSC FFFFF-NNNNN」または「GSCfffff0nnnnn (fffff0nnnnn)」という形式で表記されます。このうち「F」の部分は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測領域を示す空域コードを表しています。この標準化されたフォーマットにより、天文学者はGSC内の特定の天体データを容易に識別し、参照することができます。

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