ガイ装甲車

ガイ装甲車：第二次世界大戦下のイギリス軍を支えた装甲車

第二次世界大戦中、イギリス軍は数々の戦車や装甲車を運用しました。その中でも、ガイ装甲車は、限られた数ながら重要な役割を果たした車両の一つです。本稿では、ガイ装甲車の開発経緯、特徴、戦歴、そして派生型について詳細に解説します。

開発と製造：溶接技術の粋を集めて

ガイ装甲車の開発は1938年にガイ・モーターズ社によって開始されました。同社は、既存のクワッド・アント砲牽引車を基に、5台の試作車を製作。走行試験を経て、その性能が認められ、1939年から1940年にかけて、101輌が量産されました。当初は「ガイ装輪軽戦車」と呼ばれていました。

注目すべきは、イギリス製の装甲車としては初めて、車体が全て溶接によって製造された点です。これにより、従来の装甲車に比べて、高い強度と製造効率を実現しました。また、車体はなめらかに傾斜した装甲で構成されており、砲弾の命中率を下げる工夫が施されていました。車体中央には砲塔が設置され、ヴィッカース機関銃またはベサ機関銃が2挺装備されていました。エンジンは車体後部に搭載され、No.19無線装置も装備することで、通信能力の向上も図られていました。

ガイ装甲車の車体設計は、後継車種となるハンバー装甲車の開発にも大きな影響を与えました。これは、ガイ装甲車の設計が優れていた証と言えるでしょう。

戦場での活躍：欧州各地でその姿を現す

生産されたガイ装甲車のうち、6輌がフランスに送られ、イギリス海外派遣軍（BEF）に配備されました。これらの車両は、フランスにおける戦闘に参加し、イギリス軍の作戦行動を支援しました。

さらに、4輌はイギリス王室の近衛機動部隊（第12ロイヤル・ランサーズ）に、2輌は閣僚の護衛車両として使用されるなど、重要な任務にも従事していました。残りの車両は、イギリスに駐留していたベルギー軍、デンマーク軍、オランダ軍の部隊に配備され、それぞれの国の防衛に貢献しました。しかし、1943年頃には、より近代的な装甲車が登場したため、ガイ装甲車は役目を終え、退役することとなりました。

派生型：性能向上を目指して

ガイ装甲車は、いくつかの派生型が生産されました。

マークI: 原型と言える車両で、約50輌が生産されました。
マークI A: ヴィッカース機関銃を、より強力なベサ15mm機関砲と7.92mm機関銃に換装した改良型で、約51輌が生産されました。

これらの派生型は、戦闘経験を基に改良が加えられており、性能向上を目指したイギリス軍の努力が見て取れます。

まとめ：イギリス軍の戦いを支えた一端

ガイ装甲車は、第二次世界大戦において、その数こそ多くはありませんでしたが、フランス戦線での戦闘や、王室や閣僚の護衛など、様々な場面で重要な役割を果たしました。溶接技術を採用した車体構造や、傾斜装甲といった設計上の特徴は、後の装甲車開発にも影響を与え、イギリス軍の戦力向上に貢献したと言えるでしょう。ガイ装甲車の存在は、第二次世界大戦下のイギリス軍の装備状況を理解する上で、欠かせない要素の一つです。

参考文献

George Forty - World War Two Armoured Fighting Vehicles and Self-Propelled Artillery, Osprey Publishing 1996, ISBN 1-85532-582-9.
I. Moschanskiy - Armored vehicles of the Great Britain 1939-1945 part 2, Modelist-Konstruktor, Bronekollektsiya 1999-02 (И. Мощанский - Бронетанковая техника Великобритании 1939-1945 часть 2, Моделист-Конструктор, Бронеколлекция 1999-02).

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