ガウチョ (アルバム)

スティーリー・ダン『ガウチョ』

『ガウチョ』は、スティーリー・ダンが1980年に発表した7枚目のスタジオ・アルバムです。前作『彩（エイジャ）』の成功を受けて、莫大な費用と時間をかけて制作されました。しかし、その過程は決して平坦なものではなく、様々なトラブルに見舞われました。

制作の裏側

当初収録予定だった「The Second Arrangement」は、最終ミックスダウンまで完了していましたが、アシスタントによるマスターテープの誤消去という痛恨のミスによって、収録が見送られました。再録音も試みられましたが、満足のいく仕上がりには至らず、以前から存在していた「サード・ワールド・マン」が急遽収録されることになりました。

タイトル曲「ガウチョ」を巡っては、キース・ジャレットから盗作の訴えが起こるという事態も発生しました。ジャレットは、楽曲が自身の作曲した「Long As You Know You're Living Yours」に酷似していると主張。フェイゲンとベッカーはこれを認め、ジャレットが作者としてクレジットされることになりました。

さらに、レコーディング終盤にはウォルター・ベッカーが交通事故で入院するというアクシデントが発生。急遽スティーヴ・カーンがギターパートをオーバーダビングすることになり、ミックスダウンも大幅に遅延しました。また、レコード会社の移籍問題も絡み、アルバムの権利を巡る議論も勃発するなど、トラブルが続発しました。

音楽性

『ガウチョ』は、緻密に練り上げられたサウンドが特徴です。完璧主義者として知られるドナルド・フェイゲンの意向が強く反映されており、スタジオミュージシャンを起用し、納得のいくテイクが得られるまで何度も録り直しが行われました。その結果、洗練された都会的なサウンドが完成しました。

評価と影響

数々のトラブルに見舞われながらも、『ガウチョ』はチャート9位に入賞し、プラチナアルバムを獲得。収録曲の「ヘイ・ナインティーン」はシングルチャートで10位に入るヒットとなりました。2000年に『トゥー・アゲインスト・ネイチャー』が発表されるまで、スティーリー・ダンにとって最後のスタジオ・アルバムとなりました。

収録曲

1. バビロン・シスターズ - Babylon Sisters
2. ヘイ・ナインティーン - Hey Nineteen
3. グラマー・プロフェッション - Glamour Profession
4. ガウチョ - Gaucho （Walter Becker, Donald Fagen, Keith Jarrett）
5. タイム・アウト・オブ・マインド - Time Out of Mind
6. マイ・ライヴァル - My Rival
7. サード・ワールド・マン - Third World Man

参加ミュージシャン

• - ウォルター・ベッカー - ベース、ギター、リラ、ボーカル
• - ドナルド・フェイゲン - オルガン、シンセサイザー、キーボード、リラ、エレクトリックピアノ、ボーカル

その他、多くのスタジオミュージシャンが参加しています。詳細は上記「レコーディングメンバー」の項目を参照ください。

こぼれ話

マーク・ノップラーが「タイム・アウト・オブ・マインド」でギターソロを披露しているのは、バンドのメンバーが彼のヒット曲「悲しきサルタン」を演奏しているのを聞き、彼にソロ演奏を依頼したことがきっかけです。

ジェフ・ポーカロは、TOTOの楽曲「ロザーナ」のリズムを作る際、「バビロン・シスターズ」に代表されるパーディシャッフル、レッド・ツェッペリンの「フール・イン・ザ・レイン」におけるジョン・ボーナムのハーフタイムシャッフル、ボ・ディドリーのビートを取り入れたと語っています。

まとめ

『ガウチョ』は、スティーリー・ダンの音楽的探求の頂点を示す作品であり、その制作過程における数々の困難は、伝説として語り継がれています。完璧主義が生み出したサウンドと、都会的な歌詞世界が融合した本作は、時代を超えて愛される名盤です。

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