ガス殻星

ガス殻星（シェル星とも呼ばれます）は、星の周囲、特に赤道付近にガスの円盤構造を持つことが観測から示されている恒星の一種です。

この種の星の際立った特徴の一つは、その極めて高速な自転です。恒星は秒速およそ200キロメートルから250キロメートルという猛烈な速度で自転しており、この強力な遠心力によって、星自体が崩壊しかねないぎりぎりの平衡状態にあると考えられています。この高速自転が、星の赤道面から物質を宇宙空間に放出させ、周囲に円盤状のガス構造（ガス殻）を形成する原因だと推測されています。

形成されたガス円盤は、恒星の観測される性質に大きく影響を与えます。円盤から物質が流れ出しているため、星の明るさは一定せず、時間とともに不規則に変動します。また、星のスペクトルには、通常の恒星が持つ吸収線に加えて、円盤ガスからの輝線が重なったり、高速自転によるドップラー効果で吸収線が大きく広がったりします。

このような円盤と高速自転の影響により、ガス殻星のスペクトルは通常の星とは異なり、解析が難しくなります。そのため、スペクトルから正確な光度階級や厳密なスペクトル型を特定することが困難な場合が多く、分類が誤ることもあります。ガス殻星に見られるスペクトル型は比較的幅広く、熱いO型星の後期（O7.5）から、やや温度の低いF型星の初期（F5）まで確認されています。

不規則な明るさの変化を示すことから、ガス殻星は変光星に分類されます。特に、このタイプの代表例であるカシオペヤ座γ星にちなんで、「カシオペヤ座γ型変光星（Gamma Cassiopeiae variable、略称GCAS）」という独自の変光型に位置づけられています。

ガス殻星は、スペクトル型に基づいてさらに細かく以下の四つのサブタイプに分類されています。

初期Be星（Be-shell star）：スペクトル型O7.5からB2.5
中期Be星（Be-shell star）：スペクトル型B3からB6.5
後期Be星（Be-shell star）：スペクトル型B7からB9.5
A-Fガス殻星（A-F type shell star）：スペクトル型A0からF5

ガス殻星として最もよく知られている例は、GCAS変光星のプロトタイプでもあるカシオペヤ座γ星です。また、全天で非常に明るい恒星の一つであるアケルナルもガス殻星の例です。HR 2309のように、比較的小さく明確な円盤を持つことが示唆される星もあります。その他には、以下のような星々がガス殻星として知られています。

おおいぬ座27番星 (27 CMa)
こいぬ座β星 (β CMi)（プロキオンBとして知られる白色矮星とは異なります）
ペルセウス座φ星 (φ Per)
おうし座28番星 (28 Tau)

これらのガス殻星は、恒星の進化における質量放出や、高速自転が星に与える影響などを研究する上で、重要な観測対象となっています。

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