ガソリン携行缶

ガソリン携行缶とは

ガソリン携行缶は、ガソリンを安全に運搬・保管するための金属製またはプラスチック製の容器です。日本では、消防法によって容器の材質や容量、構造などの規格が厳格に定められており、ホームセンターやカー用品店などで販売されています。主に、農業機械、小型船舶、発電機などの小型エンジンを搭載した機械への給油に使用されます。

法令による規制

ガソリン携行缶は、消防法における危険物運搬容器として規制されています。具体的には、以下の点が定められています。

材質: 鋼板、アルミニウム板、ブリキ板、ガラス、金属板、紙、プラスチック、ファイバー板、ゴム類、合成繊維、麻、木または陶磁器などが使用可能です。ただし、ガソリンを運搬する場合は、金属製またはプラスチック製が一般的です。
構造: 堅固で破損しにくく、内容物が漏れない構造である必要があります。
最大容量: 金属製容器の場合は60リットル、プラスチック製容器の場合は10リットルが最大容量です。ただし、UN規格（国際連合勧告）に適合する容器であれば、この限りではありません。

これらの規定は、ガソリンの危険性を考慮し、安全な取り扱いを確保するために設けられています。

ガソリン携行缶の利用

ガソリン携行缶は、主に以下のような用途で使用されます。

農業機械（耕うん機、トラクター、コンバインなど）への燃料補給
小型船舶（プレジャーボート、漁船など）への燃料補給
チェーンソー、草刈り機などの小型機械への燃料補給
発動発電機、消防ポンプなどの燃料補給

特に、農業機械を利用する農家にとっては、ガソリン携行缶は必要不可欠な道具となっています。

取り扱い上の注意点

ガソリンは非常に引火しやすく、爆発的に燃焼する危険な物質です。そのため、ガソリン携行缶の取り扱いには、以下の点に注意する必要があります。

火気厳禁: 給油・使用時は、火気や引火物のない風通しの良い場所で行いましょう。
直射日光や高温を避ける: 運搬・保管時は、直射日光や高温になる場所を避け、涼しい場所に保管しましょう。
開栓時の注意: ガソリンはマイナス40度以下でも気化するため、内圧で吹き出す場合があります。必ずエア調整ネジを緩め、缶内の圧力を調整してから開栓しましょう。
静電気対策: 静電気による引火を防ぐため、開栓前に使用者自身と携行缶を接地させましょう。水気のある場所が望ましいです。
給油時の注意: セルフ式ガソリンスタンドでは、顧客自身による携行缶への給油は禁止されています。必ず従業員に依頼しましょう。また、給油中にガソリン携行缶を車内に置いたままにすることは絶対にやめましょう。
使用後の保管: 使用後の携行缶は密栓し、ホースは風通しの良い場所で乾燥させるか、洗浄しましょう。内部の腐食を防ぐため、完全に乾燥させるか、ガソリンを満たして保管しましょう。
定期的な点検: 錆び、変形、パッキンの劣化などが見られる場合は、使用を中止しましょう。また、ガソリンの劣化を防ぐため、購入後半年を目安に使い切りましょう。

セルフ式ガソリンスタンドでの注意

日本では、セルフ式ガソリンスタンドで顧客が自分でガソリンを容器に給油することは法律で禁止されています。携行缶への給油は、必ず従業員が行う必要があります。これは、ガソリンの危険性や、過去の事故の教訓から、安全を確保するための措置です。

ただし、セルフスタンドでは、従業員数が少ない場合や、他の業務で手が離せない場合があり、携行缶への給油に時間がかかることがあります。また、一部のセルフスタンドでは、携行缶への給油を断るケースもあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

ガソリン携行缶の別名

ガソリン携行缶は、別名「ジェリ缶」と呼ばれることもあります。これは、第二次世界大戦中にドイツ軍が使用していた燃料携行缶を模倣したことに由来します。ジェリ缶は、その頑丈さと使いやすさから、戦後も世界中で広く使われるようになりました。

ガソリン携行缶に関する事件・事故

残念ながら、ガソリン携行缶の取り扱いを誤ったことによる事故も発生しています。2013年には京都府福知山市の花火大会で、露店で使用していた携行缶の開栓時にガソリンが噴出し、爆発火災が発生しました。また、2019年の京都アニメーション放火殺人事件では、ガソリンが放火に使用され、多くの犠牲者が出ました。

これらの事件・事故は、ガソリン携行缶の危険性を改めて認識させ、より一層の注意喚起を促すきっかけとなりました。

まとめ

ガソリン携行缶は、正しく使用すれば非常に便利な道具です。しかし、その一方で、取り扱いを間違えると重大な事故につながる危険性も持ち合わせています。ガソリン携行缶を使用する際は、必ず使用方法を理解し、安全に十分配慮して利用しましょう。また、セルフスタンドでの給油は、必ず従業員に依頼しましょう。

危険物に関する知識を身につけ、安全な取り扱いを心がけることが大切です。

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