ガドリニウム

ガドリニウムについて

ガドリニウム（元素記号：Gd、原子番号：64）は、希土類元素の一つであり、ランタノイドに分類される金属です。この元素は、1880年にジャン・マリニャックによって発見されました。ガドリニウムという名称は、フィンランドの鉱物学者、ヨハン・ガドリンに由来します。彼はイットリア鉱石からこの元素を分離し、同鉱石の主成分であるイットリウムの発見でも知られています。

性質

ガドリニウムは銀白色の金属で、延性があり、安定した結晶構造を持ちます。常温・常圧での結晶構造は六方最密充填構造（HCP）であり、1235°Cを超えると体心立方格子のβ形に変化します。密度は7.9 g/cm³、融点は1312°C、沸点は約3000°Cです。また、ガドリニウムは水にゆっくりと溶解し、酸には容易に溶ける性質があります。その典型的な原子価は+3価で、特に電子構造が注目されます。

ガドリニウムの4f軌道には最大14個の電子が収容できますが、実際には7個の電子が存在しており、これが7つの不対電子を生み出します。このため、固体状態での磁気モーメントが極大となり、ガドリニウム化合物（例えばGd-DOTAなど）は、磁性材料やMRI検査用の造影剤として利用されています。

磁性と中性子吸収特性

Gd3+（3価の陽イオン）は4f7の対称的な電子配置を持ち、そのためにこの状態が化合物中で唯一安定となります。ガドリニウムは常温で強磁性を示し、そのキュリー点は20°C（292K）です。さらに、ガドリニウムの中性子吸収断面積は非常に大きく、原子炉の制御材料としても広く利用されています。特にガドリニウム157は、その吸収力が特に優れており、中性子捕捉療法において重要な役割を果たしています。

化合物

ガドリニウムは様々な化合物を形成します。

• - 酸化[ガドリニウム] (Gd2O3)：いわゆるガドリニアとも呼ばれる。
• - ガドリニウムガリウムガーネット (Gd3Ga5O12)：特別な材料特性を持つ結晶です。

同位体

ガドリニウムの同位体にはいくつかの重要なものがあります。特に153Gdは、X線源として骨密度測定に利用され、157Gdは熱中性子に対する吸収断面積が特に高く、25万4000バーンにも及びます。これにより、中性子吸収剤としての利用が期待されています。

ガドリニウムは、医学や材料科学の分野で重要な役割を果たす金属であり、その特性を活かした多くの応用が進められています。

もう一度検索