ガブリール・ポポフ

ガヴリール・ハリトノヴィチ・ポポフ（ロシア語: Гаврии́л Харито́нович Попо́в）は、1936年10月31日に生まれたソビエト連邦、そして後のロシア連邦の重要な経済学者であり政治家です。ギリシア系の血を引く彼は、ソ連が大きく変革を迎える時代において、改革を強く推進する立場から歴史に名を刻みました。

特にミハイル・ゴルバチョフ書記長の下でペレストロイカが進められた時期には、ボリス・エリツィンやアナトリー・サプチャークといった面々と並び、急進的な改革路線を主張する指導者の一人として知られるようになります。

彼の学術的なキャリアは、モスクワ大学に始まりました。1963年に同大学の大学院を修了した後、研究者としての道を歩み、最終的には同大学の教授に就任しています。経済学の研究者として、1970年代後半からはソ連経済の構造改革に関する論文を発表し始め、その後の政治的な活動の基盤を築きました。

ゴルバチョフによるペレストロイカが始動すると、ポポフは学術的な知見を背景に、より実践的な政治改革や複雑な民族問題に対する具体的な政策提言を積極的に行いました。彼は改革を漸進的ではなく、より根本的かつ迅速に進めるべきだという立場を明確に打ち出していました。

1988年からは、経済専門誌である『経済の諸問題』の編集長を務め、言論を通じて改革の必要性を訴え続けました。そして、1989年にソ連人民代議員に選出されると、その活動の場はさらに広がります。人民代議員大会では、同じく改革を志向するエリツィンや、著名な物理学者であり人権活動家でもあったアンドレイ・サハロフ博士らと共に、「地域間代議員グループ」と呼ばれる急進改革派の議員団を結成しました。このグループは、ソ連共産党の権力構造改革や民主化を求める声を高め、ペレストロイカの過程で重要な役割を果たしました。

ソ連崩壊直前の混乱期からロシア連邦の黎明期にかけて、ポポフは首都モスクワの市政を担うことになります。1991年から1992年にかけて、彼はモスクワの初代市長を務めました。この時期、彼はロシア連邦大統領となったエリツィンや、レニングラード（後にサンクトペテルブルクに改称）の市長だったサプチャークと並んで、ロシアにおける民主化と市場経済化を推進する改革派のリーダーシップの一角を占めました。市長としては、旧ソ連型の硬直した行政機構や経済システムを市場経済に適応させるための改革を試みたとされています。

ポポフの経歴は、ソビエト連邦の解体とロシア連邦の誕生という激動の時代において、経済学者としての知見と政治家としての実行力をもって、改革の道を切り開こうとした一人の人物の軌跡を示しています。彼はアカデミズムの世界から政治の表舞台へと転じ、ソ連末期の最も困難な時期に、首都モスクワのかじ取りを任されたことでも記憶されています。

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