ガム型電池

ガム型電池

ガム型電池は、板状でチューインガムに似た形状の充電式電池です。その独特な形状から「ガム型」と呼ばれています。主に携帯オーディオ機器などの小型電子機器に利用され、特にソニーの「ウォークマン」シリーズの小型化に大きく貢献しました。

開発の背景

1980年代、携帯音楽プレーヤー市場は、各社が製品の小型化を競い合う時代でした。ソニーは、ウォークマンの更なる小型化のため、従来の単三型乾電池に代わる小型電源として、ガム型電池の開発に着手しました。

1985年、ソニーは「WM-101」というウォークマンに、初のガム型電池「NC-5WM」を搭載しました。この電池は、幅16.7mm、高さ66.7mm、奥行き5.9mmというコンパクトなサイズで、ニッケル・カドミウム蓄電池でした。チューインガムに似た形状から、後に「ガム型電池」という愛称で呼ばれるようになりました。

ガム型電池は、単三型乾電池よりも高価でしたが、繰り返し充電できる利点がありました。これにより、ランニングコストを抑えることができました。しかし、初期のガム型電池の放電容量は450mAhと、単三型乾電池の半分程度でした。

ガム型電池の開発は、日本電池株式会社（現：GSユアサ）と共同で行われました。しかし、量産技術は確立されておらず、岡野工業株式会社の協力によって、ようやく製品化が実現しました。

製品一覧

ガム型電池は、ソニーだけでなく、他社からも類似品が発売されました。

株式会社ソニー・エナジー・テック

NC-4WM - 密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、1.2V、400mAh
NC-5WM - 密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、1.2V、450mAh
NC-6WM - 密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、1.2V、600mAh
NH-9WM - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、min.1200mAh
NH-10WM - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、min.900mAh
NH-14WM - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、min.1350mAh、typ.1400mAh

松下電器産業株式会社 (現：パナソニック)

P1-FPS - 密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、1.2V、600mAh
RP-BP61 - 密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、1.2V、600mAh
RP-BP81H - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V
HHF-1PS - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V
HHF-AZ09S - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、min.900mAh
HHF-AZ01S - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、min.1350mAh

松下電工株式会社

ES094 - 密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、1.2V、600mAh

日本ビクター株式会社

BN-R129 - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、1400mAh

シャープ株式会社

AD-N55BT - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、1400mAh

株式会社ケンウッド

NB-6 - 密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、1.2V、600mAh
NB-14 - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、min.1350mAh

アイワ株式会社

PB-S5 - 密閉型鉛蓄電池、2.0V、280mAh
PB-S5 A - 密閉型鉛蓄電池、2.0V、300mAh
PB-3 - 密閉型鉛蓄電池、2.0V、470mAh
PB-4 - 密閉型鉛蓄電池、2.0V、550mAh
PB-4S - 密閉型鉛蓄電池、2.0V、600mAh

LG電子株式会社

* HHF-120T - 密閉形ニッケル・水素蓄電池、1.2V、1300mAh

類似品と互換性

松下電器産業（現：パナソニック）などの大手メーカーも、ガム型電池の類似品を発売しました。しかし、各社は自社製品との互換性のみを保証しており、他社製品との互換性についての公式なアナウンスはありませんでした。

互換品の登場

ソニーがガム型電池の販売を終了した後、互換性を謳う製品が市場に現れました。これらの製品は、古いウォークマンなどのガム型電池を使用する機器を再び利用可能にする役割を果たしました。

余談

ソニーエナジー・デバイス株式会社は、ガム型電池とは別に、ウォークマン専用の単三型アルカリ乾電池「ウォークマン電池（LR6WM）」も発売していました。これは、ガム型電池が利用できない場合や、乾電池を手軽に使いたいユーザー向けの製品でした。


ガム型電池は、小型化を追求した電子機器の歴史において、重要な役割を果たした電池の一つと言えるでしょう。

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