ガルグイユ (竜)

ガルグイユは、7世紀のフランスの聖人、ルーアンのロマヌスをめぐる伝説に登場する竜の名前です。一般的には、ガルグイユ（フランス語: gargouille）は怪物などの形をした水落としの彫刻を指します（ガーゴイル参照）。

伝説

14世紀に流布したルーアンのロマヌスの伝説によると、セーヌ河のほとりにガルグイユという竜が棲んでいました。ガルグイユは蛇のような長い首を持ち、羽を生やした怪獣でした。口から火を吹き、水を吐き出して洪水を起こすことで人々に恐れられていました。

西暦600年ごろ、ルーアンの町にロマヌスという司祭がやってきました。ロマヌスはストラ（帯状の祭服）でガルグイユの首を巻き上げて、これを捕えたと伝えられています。捕えられたガルグイユは薪の山にくべられて焼き殺されました。しかし、ガルグイユの首から上だけは焼け残ってしまい、その首はルーアンの市壁の上に晒されることになりました。これがガーゴイルの起源であると言われています。

ガルグイユは、単なる伝説上の存在ではなく、建築物の一部としても存在しています。ゴシック建築の大聖堂などに見られるガーゴイルは、雨水を適切に排水するための機能的な役割を果たすとともに、建物を守る魔除けとしての意味合いも持っています。怪物の姿をしているのは、悪霊を追い払うためだと考えられています。

ガルグイユの伝説は、中世の人々の想像力や信仰心を反映したものであり、今日においても様々な形で語り継がれています。建築物としてのガーゴイルは、その独特な外観から多くの人々を魅了し、芸術作品としても高く評価されています。

ガルグイユは、伝説と現実が交錯する興味深い存在と言えるでしょう。

参考文献

馬杉宗夫『黒い聖母と悪魔の謎 - キリスト教異形の図像学』講談社〈講談社現代新書〉、1998年。

関連文献

佐藤達生・木俣元一『図説 大聖堂物語』河出書房新社〈ふくろうの本〉、2000年、56-57頁。
カール・シューカー『龍のファンタジー』別宮貞徳監訳、1999年、16-19頁。

関連項目

鬼瓦

もう一度検索