ガルシア・イニゲス

ガルシア・イニゲス：激動の時代を生きたナバラ国王

ガルシア・イニゲス（García Íñiguez, 810年ごろ - 870年）は、9世紀後半にナバラ王国（パンプローナ王国）の王として在位しました。初代国王イニゴ・アリスタの息子として生まれ、父の跡を継いで王位に就きましたが、その治世は決して平穏なものではありませんでした。

生涯：コルドバでの幼少期と王位継承

ガルシアは、父イニゴ・アリスタのもと、コルドバのアミール宮廷で育ちました。842年に父が麻痺に襲われると、王国の摂政として政治に関与するようになります。しかし、843年にはバヌ・カシ家のムサ・イブン・ムサと共にコルドバのアミールに対して反乱を起こし、鎮圧されるという苦い経験もしました。851年または852年に父が亡くなると、ガルシアは正式にナバラ国王の座を継承しました。

治世：同盟と戦いの日々

父の死後、ガルシアはキリスト教国であるアストゥリアス王国との同盟を深めました。これは、バヌ・カシ家がコルドバのムハンマド1世に忠誠を誓い、関係を緊密にしたことへの対抗策でした。859年には、ヴァイキングに捕らえられ、莫大な身代金を要求されるという事件も起きました。同年、ムサ・イブン・ムサがアルベルダを攻撃すると、ガルシアはアストゥリアス王オルドーニョ1世と共同でムサを打ち破り、大きな勝利を収めました。しかし、その翌年には、ガルシアの息子フォルトゥンがコルドバのムハンマド1世に捕らえられ、投獄されるという悲劇に見舞われました。

その後もガルシアは、イスラム教徒の反逆者との同盟や、ムサ・イブン・ムサの息子たちとの連携など、複雑な政治状況の中で生き残りを図りました。

死に関する謎

ガルシアの死については、記録が乏しいため、正確な年は分かっていません。870年以降の記録がないことから、870年に亡くなったとする説が有力ですが、息子のフォルトゥンがコルドバで捕らえられていたため、ガルシア・ヒメネスが摂政として王国を統治したとも言われています。しかし、そのような摂政政治が行われたという確たる証拠はありません。また、バルパルダという人物が、882年にガルシアがコルドバ軍との戦いで亡くなったとする説も存在します。このように、ガルシアの死については、多くの謎が残されています。

結婚と子女

ガルシアの妃についても、確かなことは分かっていません。ウラカという王妃がいたとする説や、アストゥリアス王オルドーニョ1世の娘レオデグンディアが妃であった可能性も指摘されています。ガルシアには、以下の子供たちがいたことが知られています。

フォルトゥン・ガルセス：後のナバラ国王
オネカ・ガルセス：アラゴン伯アスナール2世・ガリンデスと結婚
* サンチョ・ガルセス：息子アスナール・サンチェスは、兄フォルトゥン・ガルセスの娘オネカの2番目の夫となる

また、アストゥリアス王アルフォンソ3世と結婚したヒメナも、ガルシアの娘である可能性があります。ヒメナという名前や、夫がキリスト教国の王であることから、彼女がパンプローナの高位出身であることはほぼ間違いないと考えられています。

ガルシア・イニゲスは、激動の9世紀にナバラ王国の舵取りを担った人物です。史料の少なさから、その生涯には多くの謎が残されていますが、アストゥリアス王国との同盟やヴァイキングとの戦いなど、重要な出来事を経て、王国を維持し、次世代へと繋げた功績は評価されるべきでしょう。

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