ガルフ・カルテル

ガルフ・カルテル（Cártel del Golfo）

ガルフ・カルテルは、メキシコのタマウリパス州マタモロスを拠点とする麻薬密売組織で、同国で最も古い犯罪組織とされる。1910年代の禁酒法時代にフアン・ネポムセーノ・ゲーラがアルコール密造を始めたことを起源とし、その後1970年代にはフアン・ガルシーア・アブレゴの指導のもと、麻薬密売の中心となった。

歴史の概要

創設と1930年代の活動

ガルフ・カルテルは、もともとはマタモロス・カルテルとして知られ、1930年代に設立された。禁酒法の終焉後、アルコールの密輸から違法なギャンブルや売春、人身売買へと業務を拡大。アブレゴの指導下での1970年代には、麻薬の密造を活発化させていった。

1980年代から1990年代の成長

アブレゴは1980年代にコカイン密売に乗り出し、カルテルはアメリカとメキシコの国境での麻薬取引を制する位置付けとなった。彼はカリ・カルテルとの協力を通じて、コロンビアからのコカイン供給を確保し、倉庫を用意することで安定した流通ネットワークを築いた。1994年時点で、ガルフ・カルテルはアメリカ全体に対して全コカイン供給量の3分の1を取り扱うとされていた。

汚職と逮捕

1995年、アブレゴはFBIの最重要指名手配者リストに載り、1996年に逮捕された。彼は麻薬密売や資金洗浄の罪で有罪判決を受け、最終的に11回の終身刑を言い渡された。逮捕に至るまでの間、メキシコ政府内の汚職との関与が明らかになった。彼の逮捕は、アメリカからの圧力により実現したとされ、彼の組織が多くの政治家に賄賂を贈っていたことも暴露された。

アブレゴ逮捕後の権力争い

アブレゴの逮捕後、カルテル内での権力空白が生じ、内部抗争が発生。一部の幹部は新しいリーダーシップを求め、メキシコ国内の麻薬取引における争いが激化した。オシエル・カルデナス・ギレンがメキシコ軍に逮捕された後、彼の後を継いだ幹部たちによるさらなる暴力が引き起こされ、タマウリパス州の多くの都市が争いの場となっていく。

現在の活動と影響

現在、ガルフ・カルテルはアメリカ合衆国、ヨーロッパ、アフリカなど世界中に影響を及ぼしている。特にアメリカでは、テキサス州における活動が拡大し、他の犯罪組織との複雑な関係が生じている。カルテルはアメリカのストリートギャングと連携し、麻薬密売を行う一方、メキシコ政府や道義的秩序に対抗して影響力を維持し続けている。

このような状況下、ガルフ・カルテルは過去数十年にわたって活動を拡大し続け、国際的な麻薬密売ネットワークの一翼を担っている。部族間抗争や内部分裂の中で、いかにして影響力を維持するかが、今後の大きな課題となるであろう。

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