ガンディー・トゥ・ヒトラー

『ガンディー・トゥ・ヒトラー』について

2011年に製作されたインド映画『ガンディー・トゥ・ヒトラー』（原題：Gandhi to Hitler）は、歴史上の出来事を基に着想を得た作品です。ラケシュ・ランジャン・クマールが監督を務め、ラグビール・ヤーダヴとネーハー・ドゥピアが主要キャストとして出演しています。この映画は、インド独立運動の指導者マハトマ・ガンディーがナチス・ドイツの総統アドルフ・ヒトラー宛に送ったとされる手紙と、ヒトラーとその伴侶エヴァ・ブラウンの関係を物語の中心に置いています。第二次世界大戦を背景に、ガンディーの非暴力思想とヒトラーの全体主義的な思想との対比を通して、ガンディズムの優位性を描こうとする試みが見られます。

物語の概要

物語は、第二次世界大戦の激動期を舞台に進みます。軸となるのは、平和を訴えるガンディーが戦いを続けるヒトラーへ送った手紙と、ベルリンの地下壕で追い詰められていくヒトラーとエヴァ・ブラウンの間に繰り広げられる人間模様です。映画は、異なる思想を持つ二人の歴史的人物（直接的な交流はない）を対比させることで、暴力的なナチズムに対する非暴力的なガンディズムの精神的な勝利を描き出そうとします。

製作過程の論争

本作は製作段階から物議を醸しました。当初、ヒトラー役にはベテラン俳優のアヌパム・カーが予定されていましたが、ホロコーストを主導した人物を演じることに対し、インド国内のユダヤ人団体から強い抗議の声が上がりました。これを受け、アヌパム・カーは役を降板しました。しかし、製作側は、アヌパム・カーが出演契約の報酬を返還しないとして彼を非難し、損害賠償を求める訴訟を起こす事態に発展しました。これに対し、アヌパム・カーは、訴訟は映画の宣伝目的であろうとコメントしました。また、劇中には、ドイツの武装親衛隊に編成されたインド人義勇部隊が登場するなど、歴史的な要素も取り入れられています。

キャスト

主要な登場人物を演じたキャストは以下の通りです。

• - アドルフ・ヒトラー：ラグビール・ヤーダヴ
• - エヴァ・ブラウン：ネーハー・ドゥピア
• - ヨーゼフ・ゲッベルス：ナリン・シン
• - アルベルト・シュペーア：ナシール・アブドゥッラー
• - マハトマ・ガンディー：アヴィジット・ダット

公開と評価

本作は、第61回ベルリン国際映画祭でプレミア上映されましたが、批評家からの評価は極めて厳しいものでした。例えば、『ザ・タイムズ・オブ・インディア』は5つ星中2つ、『デイリー・ニュース&アナライシス』は5つ星中わずか1つという低い評価を与え、「必要性のない歴史劇」と評しました。ニューデリー・テレビジョンは、インド人俳優がドイツ人の主要人物を演じ、インドをあたかもヨーロッパの代替のように描いた点を批判しました。映画情報サイトの『コイモイ』は、5つ星中0.5という酷評ながらも、ヒトラーを演じたラグビール・ヤーダヴの演技には一定の評価を与えましたが、脚本、演出、音楽、他のキャストの演技は厳しく批判しました。

国外の批評も同様に否定的でした。『ガーディアン』紙は、この映画を「全く見当違いな内容」であり、「歴史に対する驚くべき無知」を示していると断じました。『フィルム・ビジネス・アジア』もまた、挑発的なタイトルとは裏腹に、「総統への賛美は見られない」としつつも、作品全体への評価は低調でした。

こうした批判に対し、在イスラエル・インド系ユダヤ人中央機構の代表は、インドのエンターテインメント業界の評価を損なうとして、大統領や首相に働きかける意向を示しました。これに対し、製作会社やプロデューサーは、本作はヒトラーを賛美するのではなく、彼の暴力的な思想とガンディーの平和的な思想の対立を描くことで、ガンディーの思想を浮き彫りにすることを目的としていると反論しました。

本作は、このように製作過程から公開後の評価に至るまで、様々な議論を巻き起こしましたが、批評家の間では概して否定的な見方が支配的でした。日本国内では劇場公開されていません。

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