ガンドレス

ガンドレス (GUNDRESS)

『ガンドレス』は、天沢彰原作の日韓合作アニメーション映画です。1999年 3月20日に日活の配給で東映洋画系の劇場で公開されました。しかし、映像が未完成の状態での上映となり、そのことが当時、大きな話題となりました。

概要

タイトルである『ガンドレス』は、銃（GUN）をドレス（DRESS）のように身にまとうという、作中に登場するエンジェル・アームズ社のメンバーを表現した言葉です。この言葉が示すように、「美少女と銃器・メカアクションの組み合わせ」が基本コンセプトとなっており、士郎正宗がキャラクター・メカデザイン原案で参加しています。

ストーリーは、小説版（全3巻）の外伝的な要素が強く、西暦2100年のヨコハマ・ベイサイドシティを舞台に、テロリストに対抗するべく組織されたエンジェル・アームズ社の活躍を描きます。

ストーリー

西暦2100年、ヨコハマ・ベイサイドシティは、二度の震災から奇跡的な復興を遂げ、首都・東京を凌ぐ繁栄を謳歌していました。しかし、その繁栄の陰で犯罪は多発し、テロリストによる凶悪犯罪によって治安は悪化の一途を辿っていました。市長もテロリストの凶弾に倒れ、新たに市長に就任したウォン＝ハイクは、元市警SWAT部隊隊長のゴウマンに新たな治安維持部隊の創設を命じます。

ゴウマンは、警察学校時代の教え子であるタカコ・ホウライジに警備会社設立を依頼し、タカコは異能の美少女たちを集めたエンジェル・アームズ社を設立します。エンジェル・アームズ社のメンバーは、最新式のパワードスーツ「ランドメイド」を身にまとい、テロリストとの戦いに身を投じていきます。

ある日、エンジェル・アームズ社は密輸組織の頭目を捕獲しますが、彼は身柄の安全を保障することと引き換えに取引相手の名前を教えるという取引を市長に持ちかけます。市長はこれに応じ、エンジェル・アームズ社が頭目の身辺警護を担うことになります。しかし、頭目の命を狙う新たなテロリスト集団が現れ、そのリーダーであるジャン＝リュック・スキナーは、エンジェル・アームズ社のメンバー、アリサ・タカクラの元恋人であり、既に爆死したと思われていた人物でした。

アリサが元恋人の情にほだされ、裏切るのではないかという疑念が広がる中、アリサはテロリストに捕らえられ、ジャン＝リュックと再会することになります。

登場人物

アリサ・タカクラ：エンジェル・アームズ社メンバー。21歳。元テロリストで、無愛想な性格。
ユン・ケイ：エンジェル・アームズ社メンバー。18歳。高麗共和国陸軍出身のテコンドーの使い手。
マルシア・アサノ：エンジェル・アームズ社メンバー。18歳。アメリカ育ちの元警察官。射撃の達人。
ミシェル・イガ：エンジェル・アームズ社メンバー。16歳。フランス出身の天才科学者。情報分析担当。
シルヴィア・カキハナ：エンジェル・アームズ社メンバー。19歳。沖縄出身の空手家。関西弁を話す。
タカコ・ホウライジ：エンジェル・アームズ社オーナー。25歳。元警察官。エンジェル・アームズ社を創設した。
ゴウマン:ベイサイドシティ市長補佐官。元市警SWAT部隊隊長。タカコの恩師。
ジャン＝リュック・スキナー：テロリストグループのリーダー。アリサの元恋人。
アリ・ジャイーブ・ハッサン：密輸組織の頭目。
エンドウ警部：ベイサイドシティ市警刑事。エンジェル・アームズ社と対立することが多い。
イブン・ハッサン：アリ・ジャイーブの弟。
ウォン＝ハイク：ベイサイドシティ市長。
リュウ・サエキ：エンジェル・アームズ社のランドメイドの修理を担当するメカニック。

登場メカ

ランドメイト
ドルチェ
金剛（クムガン）
ノクトゥール
トリュフ・アン
南武（ナンブ）
ケルベロス

スタッフ

製作：中村雅哉、李于錫、浅川武彦、高野輝隆、川野真寛
プロデューサー：藤家和正、吉田達
監督・音響演出：谷田部勝義
キャラクターデザイン：青木哲朗、岩井優器
脚本：ORCA、伊崎健太郎、坂井淳一、藤家和正
設定協力：士郎正宗
音楽：富永豊
アニメーション制作：サンクチュアリ（実質はスタジオジュニオ）

未完成での公開

本作は、制作管理の破綻により、大部分が未完成のまま劇場公開されるという前代未聞の事態となりました。セル画の着色が間に合わず、人物が単色で塗られていたり、動画の不足によって登場人物が同じ動作を繰り返したりするなどの不具合が見られました。

劇場公開時には、舞台挨拶は中止となり、前売り券の返金が行われ、観客には事情を説明した上で入場してもらうなど、異例の対応が取られました。また、後日、完全版のビデオを送付するという措置も取られました。

この未完成での公開は、当時大きな話題となり、新聞記事でも珍事として取り上げられました。未完成の度合いを確かめるために劇場に足を運ぶ人もいたほどです。

その後

公開後も完成のための作業が続けられ、2000年 4月29日に東京上野の劇場で完全版が2週間上映されました。

また、ビデオ化については東映ビデオが辞退し、2000年9月22日に日活からDVD版が発売されました。このDVDには、未完成の劇場公開版も特典として収録されています。

この未完成事件は、制作会社間の損害賠償請求に発展し、制作を請け負ったスタジオジュニオは、過去にも同様のトラブルを起こしていたこともあり、後に事業停止に至りました。

関係者の証言

監督を務めた谷田部勝義は、制作状況について「脚本の完成度が低く、制作が最初から躓いた」と語っています。また、キャラクター・メカデザイン原案の士郎正宗は、自身の仕事は設定画納品時に完了しており、その後の制作状況については「判らない」と述べています。

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