ガーディニア

加藤和彦『ガーディニア』

『ガーディニア』（GARDENIA）は、1978年2月5日にリリースされた加藤和彦の4枚目のソロアルバムです。作詞を安井かずみ、作曲・編曲を加藤和彦が手掛けた作品で、ドーナツ・レコードから発売された最後のアルバムとなりました。

アルバムの背景

『ガーディニア』は、加藤和彦がブラジル音楽、特にサンバやボサノヴァに本格的に取り組んだ意欲作です。制作にあたり、加藤は日本人としてのアイデンティティーを重視し、海外のミュージシャンを起用せず、レコーディングも全て日本国内で行いました。このアルバムは、加藤の音楽的な探求心と、日本の音楽シーンへの貢献を示す重要な作品と言えるでしょう。

音楽的特徴

ストリングスとホーンのアレンジは、当時加藤が初めて知り合った坂本龍一に依頼されました。ミュージシャンには、サディスティック・ミカ・バンド時代からの盟友である高橋幸宏、後藤次利に加え、笠井紀美子や村岡建、尾形道子など、ジャズ・フュージョン系のプレイヤーが多数参加し、各々のソロ・プレイが随所にフィーチャーされています。これらのミュージシャンたちの才能が、アルバムに豊かな彩りを添えています。

特筆すべきは、ミキシング作業です。スタジオ所属のエンジニアが途中で作業をボイコットしたため、実質的に加藤自身がほぼ一人でミキシングを手掛けたというエピソードがあります。この困難な状況を乗り越えて完成したことも、本作を特別なものにしています。

アートワーク

アート・ディレクションは、日系三世のグラフィック・デザイナー、ブライアン萩原と写真家のケネス・マクワンのコンビが担当しました。フロント・カバーは、安井かずみの友人であるコシノジュンコの自宅で撮影された写真をアレンジしたもので、加藤が着用しているシャツは三宅一生のデザインによるものです。洗練されたアートワークは、アルバムの音楽性を視覚的に表現しています。

収録曲について

アルバムには、多様な魅力を持つ楽曲が収録されています。

1. Gardenia:
村岡建のサックス・ソロが印象的な楽曲。1982年の大貫妙子の船上コンサートで加藤も客演し、演奏されました。

2. Today:
元ザ・ホワイト・キックスの大空はるみがカバーした楽曲。
坂本龍一のキーボード・ソロが光ります。

3. 気分を出してもう一度:
1977年に他アーティストに提供した楽曲のセルフカバー。渡辺香津美と向井滋春のソロが聴きどころ。

4. 時の流れ:
坂本龍一のアコースティック・ピアノが美しい楽曲です。

5. Spicy Girl:
村岡建と渡辺香津美のソロが織りなす、スパイシーなサウンドが特徴です。

6. Together:
向井滋春と鈴木茂のソロがフィーチャーされた楽曲。

7. まもなく太陽が沈む:
村岡建と数原晋のソロが夕暮れの情景を演出します。

8. 終わりなき Carnaval:
次曲「Maria」へとシームレスに繋がる、高揚感のある楽曲。
坂本龍一のアコースティック・ピアノ・ソロが聴きどころです。

9. Maria:
ラリー寿永のラテン・パーカッションがフィーチャーされ、サンバのリズムが再現されています。

参加ミュージシャン

加藤和彦をはじめ、豪華なミュージシャンが参加しています。

加藤和彦 (Vocal, Acoustic Guitar, Chorus)
鈴木茂 (Electric Guitar)
坂本龍一 (Acoustic Piano, Fender Rhodes, Synthesizer)
高橋幸宏 (Drums)
後藤次利 (Electric Bass)
渡辺香津美 (Acoustic Guitar, Electric Guitar)
村岡建 (Saxophone)
向井滋春 (Trombone)
* 笠井紀美子 (Vocal Accompaniment)

アルバムの意義

『ガーディニア』は、加藤和彦の音楽的な実験精神と、日本の音楽シーンにおける多様な才能の融合を示す作品として、高く評価されています。ブラジル音楽への挑戦、豪華ミュージシャンとの共演、そして加藤自身のミキシングなど、様々な要素が組み合わさり、唯一無二のサウンドを生み出しています。また、本作は加藤がザ・フォーク・クルセダーズ時代から所属していた東芝EMIを離れ、ワーナー・パイオニアに移籍する直前に発表された作品であり、DOUGHNUT RECORDSの最終リリース作品としても、その歴史的な意義を持っています。

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