ガーデンズシネマ

ガーデンズシネマ：地域に根ざすミニシアター

鹿児島市呉服町のマルヤガーデンズ内にあるガーデンズシネマは、39席という日本最小クラスの映画館です。一般社団法人鹿児島コミュニティシネマによって運営されており、単なる映画上映の場ではなく、地域文化の発信拠点としての役割も担っています。

特徴

ガーデンズシネマは、デジタルシネマ上映設備を備えた映画館としては日本最小規模であり、商業施設内に開設された日本初のコミュニティシネマでもあります。館内には映画ポスターが壁一面に飾られ、ロビーには運営を支援した個人や団体の名前が掲示されています。また、映画館入口前のカフェスペースでは、上映作品に関連した企画が頻繁に開催されます。年間30〜40回ものイベントが開催されるのも大きな特徴です。

上映作品は、食、環境、憲法、平和、原発など、社会的なテーマを扱うものが多く、上映後にはシンポジウムやトークショーなども開催されます。客層は幅広く、60代から70代の年配層だけでなく、若い世代も訪れています。2016年には、映画館を題材にした書籍『39席の映画館いつもみんなで映画をみて』や、設立者の一人である小野公宇一氏による『百萬両の女喜代三』が出版されました。

歴史

天文館の映画館街

鹿児島市の繁華街である天文館は、戦前から映画館街として栄えていました。しかし、1945年の鹿児島大空襲で全ての映画館が焼失。戦後、1947年までには5館が復活し、賑わいを取り戻しました。1953年には、天文館に9館もの映画館が軒を連ね、鹿児島県全体では42館に達しました。1960年には、映画館数はピークを迎え、県内104館、鹿児島市には26館が存在し、そのうち16館が天文館にありました。映画評論家の寺脇研氏も、学生時代に天文館の映画館に入り浸っていたと語っています。

映画館の衰退と復活

テレビの普及や郊外化により、映画館は衰退の一途を辿ります。1972年には、県内の映画館数は最盛期の半分にまで減少。1999年には、県内で映画館が存在する自治体は鹿児島市のみとなりました。天文館には、複数のスクリーンを持つ複合映画館が残っていましたが、2004年にJR鹿児島中央駅前に大型シネコンが開業したことで状況は一変。天文館の映画館は次々と閉館し、2006年にはついに映画館が消滅しました。

鹿児島コミュニティシネマの発足

そんな中、映画文化の灯を絶やさないために立ち上がったのが、現在のガーデンズシネマ支配人である黒岩美智子氏です。黒岩氏は、天文館の映画文化について考えるシンポジウムで問題提起を行い、コミュニティシネマの勉強会に参加。2007年に自主上映団体「鹿児島コミュニティシネマ」を発足させました。上映会を重ね、多くの観客を集め、2009年には映画製作にも取り組みました。当初は常設映画館の設立を目指しましたが、資金難で断念。その後、マルヤガーデンズの開業に伴い、2010年1月に常設映画館（ミニシアター）の開業にこぎつけました。

ガーデンズシネマの開館

2010年 4月28日、マルヤガーデンズの開店と同時にガーデンズシネマが開館しました。開館当初は、コミュニティシネマが製作した映画や、海外のドキュメンタリー映画などを上映。当初の集客は苦戦しましたが、夏に上映した『キャタピラー』が大きな反響を呼び、今日まで記録となる1,800人以上の観客を集めました。同年には、韓国映画ウィークの開催、一般社団法人化、興行組合への加入など、様々な活動を展開。2011年には、他県の映画館から譲り受けた映画館専用の椅子を導入しました。

デジタル化と天文館の復活

ガーデンズシネマ開館後、天文館には複合映画館「天文館シネマパラダイス」が開館。これにより、ガーデンズシネマの来場者数は一時的に減少しました。しかし、2012年夏から上映設備のデジタル化に向けた募金活動を行い、2013年にはデジタルシネマに対応。開館当初は赤字が続いていましたが、2013年度には初の黒字を達成しました。

舞台挨拶など

ガーデンズシネマでは、多くの監督や俳優を招いた舞台挨拶やトークイベントが開催されています。長澤雅彦監督、吉田大八監督、塚本晋也監督など、著名な映画監督が訪れ、観客との交流を深めています。また、上映作品に関連したシンポジウムやトークショーも頻繁に開催されており、映画鑑賞だけでなく、より深く作品を理解する機会を提供しています。

ガーデンズシネマは、単なる映画館としてだけでなく、地域文化の発信拠点として、多くの人々にとってかけがえのない存在となっています。

基礎情報

所在地：鹿児島県鹿児島市呉服町6−5 マルヤガーデンズ 7階
アクセス：JR鹿児島中央駅東口から鹿児島市電2系統または鹿児島市営バスで約10分、いづろバス停またはいづろ通停留場から徒歩1分
座席数：39席
支配人：黒岩美智子

脚注

参考文献
ガーデンズシネマ部『39席の映画館いつもみんなで映画をみて』燦燦舎、2016年 ISBN 978-4907597023
唐鎌祐祥『かごしま映画館100年史』南日本新聞開発センター、2017年
斉藤悦則「鹿児島の映画環境」『鹿児島県立短期大学地域研究所研究年報』鹿児島県立短期大学、第41号、2009年
外部リンク
公式ウェブサイト
ガーデンズシネマ - Facebook
ガーデンズシネマ - X（旧Twitter）

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