ガーラット式機関車

ガーラット式機関車とは

ガーラット式機関車（ガーラットしききかんしゃ）は、関節式蒸気機関車の一種であり、その名称はイギリスの機関車技術者ハーバート・ウィリアム・ガーラットに由来する。この機関車の特徴的な構造は、車体が三つの部分に分かれており、中央の台枠にボイラーを浮かせ、その前後に動輪がついた可動式の台枠を配置している点にある。これにより、機関士は一人で操作でき、重連運転よりも運用が楽になる。

ガーラット式はその見た目から、同じ関節式蒸気機関車の一種であるメイヤー式に似ているが、メイヤー式はボイラーに独自の台枠を持たないのに対して、ガーラット式は足回りが二台分あり、ボイラー用の台枠を持つことがその大きな違いである。

歴史

ガーラット式機関車は1907年に初めてイギリスのニューサウスウェールズ鉄道でハーバート・ウィリアム・ガーラットによって開発された。彼は連接式の大砲輸送機を参考にしてこの方式を考案し、ベイヤー・ピーコック社の協力の下で実用化が進められた。1920年代後半まで同社は独占的に製造を行っていた。

最初のガーラット式機関車には、オーストラリアのタスマニア島政府鉄道によるK1型が含まれた。この機関車は、複式で総重量34トン、牽引力6521キログラムを誇り、特にその性能は優れていた。その後、オーストラリアやアフリカ諸国で重量貨物用に多くのガーラット式機関車が作られ、旅客用の形式もスペインやアルジェリアなどで見られた。

イギリスでは長大な石炭列車用に数形式が製造されたものの、国内の鉄道網ではそれほど広まらなかった。ガーラット式の特徴を活かしつつも、1961年まで新造された機関車は続き、スペイン国鉄の282形はその後の最後の幹線用蒸気機関車となった。

ガーラット式の利点

ガーラット式の大きな利点は、ボイラーの下に空間があるため、缶胴や火室の設計の自由度が高く、特にナローゲージにおいては重心を上げることなく大きなボイラーを搭載できる点にある。例えば、東アフリカ鉄道の59形では、1000mmの軌間に対して直径2284mmのボイラーが搭載され、動輪の直径も1372mmを実現している。

また、ボイラーが短くコンパクトに設計されているため、無駄な放熱を減少させ、効率的な加熱が可能となる。さらに、同じホイールベースを持つ固定台枠式よりも急曲線への対応能力が高く、動輪の数を増やすことで走行時の負担を軽減することができる。

専門家の実験では、理論上の最大出力と引張力を持ったガーラット式機関車が描かれており、その性能可能性が高いことが示された。デザインの自由度と急曲線に対する強さが、ガーラット式機関車の魅力を高めている。

ガーラット式の短所

しかし、ガーラット式にはいくつかの短所も存在する。特に、シリンダーがボイラーから離れた位置にあるため、蒸気パイプが長くなることで凝縮が起こりやすく、効率的な蒸気供給に影響を与える。また、関節式機関車全般に言えることだが、構造の複雑さから高い技術が求められる。

走行部の分離による全長の増加や、タンクの規模に影響される水の消耗が、運用上の難しさを生じることもある。これらの問題は、別途水槽車を使用することで部分的に解決可能だが、実際には運用上の制約を伴うこともある。

生産と保存

現在、約250両のガーラット式機関車が現存しており、その多くは部品取り用や解体されかかっているものの、100両以上は博物館や保存鉄道で保管されている。ニュージーランドでは走行できる形式もあり、世界各地でその姿を見かけることができる。

ガーラット式機関車は、かつての蒸気機関車の中で特異な存在であり、その多彩な利用と進化の過程が今も多くのファンに支持され続けている。

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