ベイヤー・ピーコック

ベイヤー・ピーコック：イギリスの名門鉄道車両メーカー

ベイヤー・ピーコック(Beyer, Peacock & Co. Ltd.,)は、19世紀にイギリスのマンチェスターで創業した鉄道車両メーカーです。チャールズ・ベイヤーとリチャード・ピーコックの2人によって設立され、1854年から1966年までの間に、8000両を超える蒸気機関車、スチームトラム、ディーゼル機関車などを製造しました。

ガーラット式蒸気機関車のライセンスホルダー

同社は、ウィリアム・ガーラット技師が考案したガーラット式蒸気機関車のライセンスホルダーとしても知られています。1909年にタスマニア向けに出荷された最初の車両（軸配置B+B、製造番号5292）から、1958年にナミビア向けに出荷された最終車両（軸配置1C1+1C1、製造番号7868）まで、1,000両以上を北米大陸を除く世界各国に輸出しました。

日本への貢献：愛称「ピーテン」

ベイヤー・ピーコック製のテンダー機関車は、日本では「ピーテン」（ピーコック社製のテンダー機の略）という愛称で親しまれています。日本の鉄道黎明期に、国鉄（当時の鉄道省）や私鉄に多数輸入され、鉄道網の発展に大きく貢献しました。

その他の事業

1949年には、メトロポリタン・ヴィッカース社との合弁会社を設立し、イギリス国鉄向けに82形電気機関車の製造も行いました。また、ディーゼル機関車としては、液体式の35形ディーゼル機関車、電気式の25形ディーゼル機関車、他社製造の下請けとして17形ディーゼル機関車を製造しました。

残念ながら、ベイヤー・ピーコックは1966年に廃業しましたが、その技術と功績は今もなお鉄道史に深く刻まれています。

日本に輸入された主なベイヤー・ピーコック製蒸気機関車

以下に、日本に輸入された主なベイヤー・ピーコック製蒸気機関車を紹介します。太字の車両名は「ピーテン」と呼ばれたテンダー機関車です。（）内は発注会社と形式を示します。斜体字の車両名は準同形機です。

鉄道院3200形（日本鉄道P3/5形）：1904年製造、軸配置2-6-2（1C1）。日本鉄道が導入した勾配線用重タンク機。
鉄道院3920形（鉄道作業局C2形）：1892年製造、軸配置2-6-0（1C）。官設鉄道信越線の横川～軽井沢間（碓氷峠）で使用されたアプト式機関車。
鉄道院3950形（鉄道作業局C3形）：1895年製造、軸配置2-6-2（1C1）。官設鉄道が導入した3920形の改良形。
鉄道院5300形（鉄道作業局D5形、山陽鉄道3形）：1882年製造、軸配置4-4-0（2B）。官設鉄道、山陽鉄道が導入した旅客用テンダー機。
鉄道院5490形（鉄道作業局D3形）：1882年製造、軸配置4-4-0（2B）。官設鉄道が導入した旅客用機関車。輸入当初はタンク機であったが、後にテンダー式に改造された。
鉄道院5500形（鉄道作業局D6形、日本鉄道Pbt2/4形、東武鉄道B1形）：1883年製造、軸配置4-4-0（2B）。官設鉄道、日本鉄道、東武鉄道が導入した旅客用テンダー機。「ピーテン」の代表格。
鉄道院5600形（日本鉄道Pbt2/4形、東武鉄道B3形）：1889年製造、軸配置4-4-0（2B）。日本鉄道が導入した5500形の改良形。ベルペア火室が特徴。東武鉄道が準同形機を導入。
鉄道院7700形（鉄道作業局E4形、北海道鉄道C1形）：1894年製造、軸配置2-6-0（1C）。官設鉄道、北海道鉄道が導入した勾配線用テンダー機。ベルペア火室とサイドタンクが特徴。


以下は、他社製品と同仕様で製造されたものです。

鉄道局形式I（東京市役所、東武鉄道A1形）：1892年製造、軸配置0-6-0（C）。ナスミス・ウィルソン製の工事用タンク機と同系。
鉄道院1900形（日本鉄道P3/3形）：1896年製造、軸配置0-6-0（C）。キットソン製の勾配線用タンク機と同系。
鉄道院7080形（日本鉄道Pt3/4形）：1902年製造、軸配置0-6-2（C1）。ダブス製の勾配線用テンダー機と同系。ベルペア火室を備える。

その他のベイヤー・ピーコック製機関車

メトロポリタン鉄道A形蒸気機関車
* ローデシア鉄道クラス15蒸気機関車

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