キアサージ号とアラバマ号の海戦

キアサージ号とアラバマ号の海戦

1864年、フランスの画家エドゥアール・マネが発表した『キアサージ号とアラバマ号の海戦』は、アメリカ南北戦争の重要な出来事を描写した作品です。この絵は、1864年6月にフランス・シェルブール港沖で行われた実際の海戦をテーマに若干の解釈を加え、描かれています。

背景

この作品が生まれた1864年は、マネにとって特別な年でした。前年には画展での作品『草上の昼食』が風紀に反すると非難され、一躍有名になった年です。南北戦争が進行中であったこの時期、北軍は戦局を優位に進めていました。一方で、南軍の軍艦CSSアラバマは1862年から通商破壊活動を行い、北軍の艦船に多大な損害を与えていました。

1864年の6月11日、アラバマは修理と補給のためシェルブール港に入港しました。この直後、アラバマを狙い続けていた北軍のUSSキアサージがようやくシェルブールに到着しました。アラバマの艦長ラファエル・セムズは、逃げるのではなく戦うことを決意し、6月19日にキアサージとの戦闘に臨みました。

海戦の様子

この戦闘はおよそ1時間にわたって激しい砲撃戦が繰り広げられ、アラバマはついに沈没しました。この海戦はフランスやイギリスのメディアでも大きく報道され、国際的な関心を呼びました。マネ自身は戦闘現場を直接目撃していませんでしたが、報道を基にこの作品を制作しました。

作品の展示

マネのこの新たな挑戦は、1864年の6月26日にパリのアルフレッド・カダールの画廊で初めて展示されました。その後の1872年、画商ポール・デュラン＝リュエルにより再びサロンに出品され、多くの観客がその迫力に圧倒されました。以降、所有者は何度も変わり、最終的には1888年にフィラデルフィアの弁護士ジョン・G・ジョンソンに購入され、彼の死後1917年にフィラデルフィア美術館に遺贈されました。

作風と構図

この作品には、高い位置にある水平線近くに沈みかけているアラバマの姿が描かれています。後ろの煙に隠れたキアサージはかすかに見え、緊迫した戦闘の様子を表現しています。前景には脱出を試みる水兵を救おうと急ぐフランスのヨットが描かれ、観る者に深い感情を呼び起こします。

まとめ

マネの『キアサージ号とアラバマ号の海戦』は、戦争と人間の悲劇を題材にした貴重な作品です。その独自の視点から描かれた海戦の情景は、歴史的事件の記憶を今に伝えています。

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