キサガイヒメ・ウムギヒメ

キサガイヒメ・ウムギヒメの神話

キサガイヒメとウムギヒメは、日本神話に登場する重要な女神たちであり、主に『古事記』や『出雲国風土記』に記されています。前者では𧏛貝比売（キサガイヒメ）と蛤貝比売（ウムギヒメ）として登場し、後者ではそれぞれ支佐加比売命と宇武賀比売命という名前で知られています。

神格化された存在

この2柱の女神は、赤貝と蛤を神として扱っていると考えられています。赤貝がキサガイヒメに結びついており、蛤がウムギヒメに関連しています。両女神は神産巣日之命と密接な関係を持ち、特に『古事記』では、大国主神が火傷を負った際に、キサガイヒメとウムギヒメが神産巣日之命の指示の下、彼を治療したという逸話が描かれています。

治療のエピソード

物語によれば、八十神たちの嫉妬により、大国主神が焼け死にかけたところ、神産巣日之命が両女神を派遣しました。キサガイヒメは「刮（きさ）げ集め」、ウムギヒメは「持ち承（う）けて母（おも）の乳汁（ちしる）を塗り」ました。この治療により、大国主神は蘇生したと伝えられています。この記述にはいくつかの解釈が存在します。一説では、赤貝の殻を粉末にして母乳のような蛤の汁に溶かし、火傷の治療に使用したとされます。別の解釈では、蛤の汁が母乳としての生命力を促進し、そのことが蘇生に繋がったという見方もあります。

古代の民間療法

古くから蛤は薬剤として利用されてきたことがわかりますが、赤貝の効能については不明な点が多いものの、キサガイヒメが「きさげ集め」という語を通じて何らかの意味を持っていたことは確かです。また、両女神には「父」と「母」という関係性が示唆されているとも考えられています。

出雲国風土記の記載

『出雲国風土記』では、キサカヒメ命やウムカヒメ命はそれぞれ別々に登場し、神魂命の御子神として描かれます。それぞれ特有の物語として、キサカヒメ命は加賀の神埼で佐太大神を産み、ウムカヒメ命は法吉鳥に変身し法吉郷に飛来し、その土地に鎮座したと記されています。この出産のエピソードは、他の神話と類似性が見られ、神話における豊かなテーマを形成しています。

祭られる神社

キサガイヒメとウムギヒメを祀る神社は日本各地に存在します。

• - キサガイヒメの神社:

- 岐佐神社（静岡県浜松市） - 主祭神
- 加賀神社（島根県松江市） - 主祭神
- 神魂伊能知比売神社（島根県出雲市） - 祭神

• - ウムギヒメの神社:

- 岐佐神社（静岡県浜松市） - 主祭神
- 法吉神社（島根県松江市） - 主祭神
- 神魂伊能知比売神社（島根県出雲市） - 祭神

このように、キサガイヒメとウムギヒメは日本神話中で重要な役割を果たしており、彼女たちを祀る神社も多く、地域の信仰の対象となっています。

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