キタオットセイ

キタオットセイ

キタオットセイ（学名：Callorhinus ursinus）は、食肉目アシカ科に分類される海棲哺乳類の一種です。この動物はキタオットセイ属を構成する唯一の種であり、一般的には単に「オットセイ」と呼ばれることもあります。

分布

この動物は、北太平洋の広範囲に生息しています。主な分布域は、アメリカ合衆国西部沿岸からロシア東部の海域にかけて広がり、オホーツク海やベーリング海でも見られます。繁殖のために特定の島嶼部に集まる習性があり、主な繁殖地としては、コマンドル諸島、千島列島、プリビロフ諸島、サン・ミゲル島、ロベン島などが知られています。これらの繁殖地で生まれた個体は、サン・ミゲル島の群れを除き、冬季になるとより温暖な海域を求めて南へ移動し、越冬します。

形態

キタオットセイは、性別によって体格に大きな差があるのが特徴です。オスの成獣は全長が2メートルを超える場合もあり、体重は180キログラムから270キログラムに達します。一方、メスの成獣はオスよりもかなり小さく、最大でも全長約1.5メートル、体重約50キログラムほどです。顔つきとしては、吻（ふん、鼻口部）が短く、やや下向きについています。全身は非常に細かい下毛が密生しており、優れた保温性を持ちます。耳介（耳たぶ）は比較的小さめです。

毛色も性別や成長段階で異なります。出産直後の幼獣は、全長が66センチメートルから69センチメートル程度で、全身が黒い毛に覆われています。オスの成獣は、首周りの体毛が長く伸びてたてがみ（鬣）のようになり、毛色は黒や暗褐色を呈します。メスの成獣や幼獣の毛色は、背中側が灰色、腹側が赤褐色になることが多いです。

分類

アシカ科の中でも、キタオットセイは他の種とは比較的早期に分岐したと考えられています。遺伝子的な研究などから、約600万年前に独自に進化した種であることが示唆されています。

生態

キタオットセイはその一生のほとんどを海で過ごす海洋性の動物です。食性は動物食で、主に魚類や頭足類（イカなど）を捕食します。特にスケトウダラやハダカイワシなどが餌として知られています。

繁殖形態は胎生です。繁殖期が始まると、オスの成獣は繁殖地に上陸し、他のオスと争って自身の縄張りを形成します。その後、海から上陸してきたメスが出産を終えると、交尾が行われます。通常、毎年6月から8月にかけて、メスは1回に1頭の幼獣を産みます。生まれた幼獣は約4週間という比較的短い期間、母親から授乳を受けて成長します。

性成熟を迎える年齢はオスとメスで異なります。メスは生後3年から4年で繁殖が可能になります。一方、オスは生後約7年で性的に成熟しますが、実際に繁殖に参加できるようになるのは、縄張りを確保できるような体格と経験を得る生後9年から15年頃です。寿命も性別で異なり、オスは約15年ですが、メスは約30年とオスより長く生きます。

人間との関係

キタオットセイは歴史的に人間との関わりが深い動物です。かつては、その高品質な毛皮を目的とした過剰な狩猟、すなわち乱獲によって、生息数が激減した時代がありました。例えば、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、プリビロフ諸島だけで250万頭もの個体が捕獲されたと推定されています。その後の数十年でも、さらに100万頭以上が狩猟された記録が残っています。

このような壊滅的な状況を受けて、国際的な保護の取り組みが進められました。1892年には商業目的の捕獲に対する国際的な制限が導入され、1910年には海上での捕獲やメスの捕獲が全面的に禁止されました。そして1985年には、ついに商業目的の捕獲自体が禁止されるに至りました。これにより、かつての激減からは回復傾向にありますが、現在でも漁業活動との競合や、漁網などへの混獲といった要因による生息数への影響が懸念されています。

この種は、海洋生態系における重要な構成要素であり、その保護は国際的な協力によって進められています。

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