キッサの戦い

キッサの戦い：第二次ポエニ戦争初期の激突

キッサの戦いは、紀元前218年の秋、第二次ポエニ戦争の初期にイベリア半島（現在のスペイン）北東部、タラッコ近郊で繰り広げられました。グナエウス・コルネリウス・スキピオ・カルウス率いるローマ軍が、ハンノが指揮するカルタゴ軍を打ち破り、ハンニバルが占領したエブロ川以北の地を奪還するという結果になりました。

戦略的背景

ハンニバルはサグントゥムを包囲し勝利した後、大軍を率いてローマへの侵攻を開始しました。彼はエブロ川以北のイベリア人の地を制圧し、ガリアへと進軍。その際、ハンノに11,000の兵を与え、エブロ川以北の防衛を任せました。

一方、ローマは第二次イリュリア戦争のために既に強力な海軍を保有していました。執政官の一人であるティベリウス・センプロニウス・ロングスは、多数の兵と艦隊を率いてアフリカへ向かうよう命じられ、もう一人の執政官プブリウス・コルネリウス・スキピオは、兵と艦船を率いてイベリア半島へ向かうよう命じられました。しかし、北イタリアでガリア人が反乱を起こしたため、プブリウス・スキピオの軍は鎮圧に転用され、イベリア遠征は遅れることになりました。

ハンニバルがガリアを通過中、スキピオは同盟都市マッシリアに上陸し、偵察隊を派遣。カルタゴ軍と小競り合いが発生しましたが、ハンニバルは既にアルプス越えを開始していました。スキピオは軍を兄のグナエウス・コルネリウス・スキピオ・カルウスに委ねイベリアへ向かわせ、自身はイタリアへ戻り、ハンニバルの侵攻に備えました。

戦闘の経過

ハンニバルの弟であるハスドルバル・バルカは、エブロ川以南を防衛。ハンノはエブロ川以北を防衛していました。グナエウス・スキピオは、兵を率いてアンプリアスに上陸。ローマ軍の到着を歓迎したアンプリアスとタラッコを拠点としました。ハスドルバル・バルカはハンノとの合流を試みましたが、間に合いませんでした。

ハンノはローマ軍のイベリア到着に動揺しつつも、ローマ軍との対決を決意。タラッコ北方のキッサと呼ばれる地で、ローマ軍と激突しました。両軍は正面から衝突し、兵力で劣るカルタゴ軍は敗北。ハンノ自身を含む多数の捕虜を出すこととなりました。さらに、ローマ軍はカルタゴ軍の野営地を襲撃し、多くの物資を鹵獲しました。

戦闘の影響

グナエウス・スキピオはエブロ川以北の支配権を確立し、ハスドルバルはローマ軍との対決を避け、カルト・ハダシュトへ撤退しました。ローマ軍はイベリア半島のカルタゴ拠点を攻撃し、イベリアにおけるローマの評判を高めました。

もしハンノがキッサの戦いで勝利していれば、ハンニバルはより早くイベリアからの援軍を得ることができたでしょう。グナエウス・スキピオの勝利は、敵地での基地確保、現地部族からの支援獲得、ハンニバルとの連絡線遮断を可能にし、その後のローマ軍のイベリア半島での作戦の基礎を築いたという点で大きな意味を持ちました。

この戦いは、第二次ポエニ戦争の行方を左右する重要な一戦であり、ローマとカルタゴの長きにわたる戦いの序章となりました。

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