プブリウス・コルネリウス・スキピオ

プブリウス・コルネリウス・スキピオは、紀元前211年に没した共和政ローマの軍人です。父はルキウス・コルネリウス・スキピオ、兄はグナエウス・コルネリウス・スキピオ・カルウスであり、彼自身も名門コルネリウス氏族の一員でした。彼の息子たち、プブリウス・コルネリウス・スキピオ（後のスキピオ・アフリカヌス）とルキウス・コルネリウス・スキピオ（後のスキピオ・アシアティクス）は、父の志を継ぎ、ローマの歴史に名を刻むことになります。

紀元前218年、スキピオは執政官（コンスル）に選出されます。当時、第二次ポエニ戦争が勃発し、カルタゴの名将ハンニバルがイタリアに侵攻を開始しました。スキピオは当初、海路からの侵入を警戒し、ピサやマッシリアに軍を配置していましたが、ハンニバルはアルプス山脈を越えてイタリアに侵入するという予想外の行動に出ました。この報を受け、スキピオは急遽ヒスパニアに展開していた軍をイタリア北部のガリア・キサルピナ地方に召集し、兄カルウスと共に防衛体制を構築しました。

しかし、その帰路、ポー川付近でハンニバルの部隊と遭遇し、戦闘に敗北。スキピオ自身も重傷を負います。この敗戦経験から、スキピオは同僚の執政官ティベリウス・センプロニウス・ロングスに対し、ハンニバルに対しては慎重な対応を取るよう忠告しますが、センプロニウスは果敢にハンニバルに挑み、再びローマ軍は敗北を喫してしまいます。

相次ぐ敗北にもかかわらず、スキピオはローマ軍の力と自らの能力を信じていました。彼は司令官としての任期を延長され、翌年には兄カルウスと共にハンニバルの本拠地であるヒスパニアに遠征します。この遠征の詳細な内容は不明確ですが、ヒスパニアのカルタゴ領を防衛するハスドルバル・ギスコ率いるイベリア人部隊と戦い、紀元前211年12月、スキピオは兄カルウスと共にカルタゴ・ノヴァ近郊の戦いで戦死しました（バエティス川の戦い）。

スキピオの生涯は、第二次ポエニ戦争初期の激動と苦難を象徴しています。彼はハンニバルの侵攻を食い止めることができませんでしたが、その勇敢な行動と不屈の精神は、後に息子たちによって受け継がれ、ローマの勝利に貢献しました。

家族構成

父: ルキウス・コルネリウス・スキピオ
兄: グナエウス・コルネリウス・スキピオ・カルウス
息子: プブリウス・コルネリウス・スキピオ（後のスキピオ・アフリカヌス）
息子: ルキウス・コルネリウス・スキピオ（後のスキピオ・アシアティクス）

関連項目

スキピオ家
共和政ローマ執政官一覧

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