キツネアザミ

キツネアザミ（狐薊）

キツネアザミ（学名: Hemisteptia lyrata）は、キク科キツネアザミ属の越年草です。道端や空き地など、身近な場所で見かけることのできる雑草です。

形態・生態

草姿: 茎は直立し、上部で枝分かれして高さ60-80cmになります。
葉: 葉は長さ10-20cmで柔らかく、裏面には白い綿毛が密生しています。下部の葉は長楕円形で羽状に深裂します。アザミのような刺はありません。
花: 紅紫色の筒状花からなる頭花を、枝の先端に多数つけます。花の直径は約2.5cmで、上向きに咲きます。花期は4月から6月頃です。
総苞: 球形で長さ12-14mm、総苞片は8列あり、背面の上部に竜骨状の突起があります。この突起は紅紫色に色づきます。
痩果: 長楕円形で長さ2.5mm、無毛で斜めに花床についており、側面には15本の鋭い肋が走っています。

和名の由来

和名の由来には諸説あります。

牧野富太郎による説: 花がアザミに似ているが、アザミではないため、「狐に騙されたよう」に感じることから名付けられた。
中村浩による説: 江戸時代には「眉刷毛」に似た花として「キツネノマユハケ」や「マユハケアザミ」と呼ばれており、これらの名前が混同して現在の和名になった。

中村浩は牧野富太郎の説に対し、「全く珍妙で、少しも納得がいかない」と批判しています。

分布・生育地

日本（本州 - 沖縄）、朝鮮半島、中国、インド、オーストラリアなどに分布します。日本には古い時代に渡来したと考えられています。

田畑や道端など、日当たりの良い場所に生育します。

生態

種子から発芽し、ロゼット状の葉で越冬します。春になると茎を伸ばし、花を咲かせます。

分類

アザミ属とは、痩果の先端から出る冠毛のうち外側の列のものが短くて羽毛状にならない点で区別されます。キツネアザミ属は本種のみの一属一種です。

類似種

*エゾノキツネアザミ (Breea setosa): 本州北部から北海道に分布する多年草。立ち上がった茎の先にアザミに似た花をつけますが、葉の縁に小さな棘があります。

人間との関わり

利用: 若葉を茹でて水にさらし、餅に加えて食用とすることがあります。中国では全草を消炎、解毒に用います。
* 雑草: 田畑に生える雑草ですが、さほど繁茂するものではありません。

キツネアザミは、その名前の由来や形態、生態など、興味深い特徴を持つ植物です。道端で見かけた際には、ぜひ観察してみてください。

もう一度検索